東京都下初のIKEA
2014年4月にIKEA立川がオープンした。日本では7番目で、東京都下では初めての出店となった。IKEA立川と言えば、北欧のオシャレなデザイン家具、雑貨、小物を格安の価格で販売している店だ。そしてお客さんは、購入した大きな荷物を自家用車に乗せて持って帰るケースが多いのも特徴的だ。IKEA立川が今までのIKEAと異なる点として、店直結の駐車場は購入金額に関わらず一律1000円の料金を徴収するというシステムを取った点だ。これは成功を続けているIKEAのビジネスモデル、とりわけお客さんの購買行動という視点においては、あえて逆を行っている点で興味深い。
IKEA立川はなぜ、店直結の駐車場利用で1000円を徴収することにしたのだろうか。
駐車場利用費を徴収するIKEA立川の狙い
駐車場利用費を徴収する最大の目的は近隣配慮だ。つまり、渋滞が起きないようにする施策として「1000円」の壁を利用した。そして、あえて駐車場を店の遠くにした。本来、大きな荷物を買って帰るお客さんの多いIKEAの特性を考えれば、ビジネス上とても不利に働く。それでもIKEA立川は実施した。大きなポイントは顧客満足度が下がっても、近隣配慮を重視するという判断をしたことだ。直結の駐車場ではなく、店から離れた無料駐車場に止めてもらいシャトルバスでIKEAまで来てもらったり、店直結駐車場より安い近隣の公共・民間駐車場を利用してもらうという狙いがそこにある。また、そもそも自動車ではなく電車などの公共交通機関を利用してもらおうという狙いもある。なぜ、多摩都市モノレールでラッピング広告をしたのか
それを示すのが広告プロモーションだ。IKEA立川のオープンに合わせて、多摩都市モノレールにIKEA TRAINを走らせた。表側のラッピング広告だけでなく、社内もIKEAの家具などを使ったという凝りようだ。通常、このような新店オープンの際、電車の広告を使う場合には、中吊広告や窓上広告などを実施することが普通だ。ここまで大々的に、しかも乗降客数が多いとは言えない多摩都市モノレールで広告をするのは異例のことだ。これは公共交通機関を使って欲しいと訴えるだけでなく、地域を大事にしているという姿勢を明確に打ち出しているプロモーションだったのだ。なぜ、他のIKEAと外観が違うのか
IKEA立川が地域配慮をしている証明がもう一つある。それは外観だ。IKEAの店舗と言えば、黄色とブルーが壁一面に目立つ店舗だ。よく言えばインパクトがあるが、悪く言えば無機質で押し迫られる感じがある。IKEA立川は、外観においても黄色とブルーのスペースを少なくし、ガラスなどを多く取り入れた。出来るだけ地域の景観にとけ込むよう、デザインルール自体も変更したのだろう。一昔前のブランディングであれば、周囲には関係なく、画一的なデザインを踏襲していくのだが、IKEA立川はそれをしなかった。自社のデザインルールよりも、地域の景観とのマッチングを重視したのだ。IKEA立川が示す「地域重視」の重要性
近隣への配慮が大事
すでにその傾向は出ている。今、若者ですら東京には憧れず、地元から出たがらない人が多くなっている。コンビニのナカショク、つまりお惣菜やコーヒーが売れる理由の一つは、あえて外のどこかで食べるよりも、なるべく家にいたいからというものだ。そして最近のコンビニは宅配物の受け取り、住民票などの入手、薬局など、サービスが拡充されて来ている。あえて、どこかに行かなくても済むようなシステムが進展しているのだ。
こうした中では、遠くのお客さんを集めることも大事だが、近くの人達に長く愛され続けることが出来ることがもっと重要になってくる。そして、企業姿勢として地域をどれだけ重視しているかが問われてくる。
IKEAは業種の特性上、そこまで地域に配慮しなくても良い業種なのだが、それでも地域をここまで重視した。それはビジネスを成功させ続けて来たIKEAには、これから地域重視という企業姿勢がより重要となることがわかっているからであり、この姿勢の打ち出しが地域住民はもとより他の人達にまでプラスの影響を及ぼすことがわかっているからだろう。