歳をとると眠る時間帯がずれやすい
元気で長生きするには、よく眠ることが大切です
そのため、睡眠と覚醒のリズムが乱れて、睡眠時間が短くなり、深い睡眠が減り、眠る時間帯(睡眠相)のずれが起こりやすくなります。
高齢者の中でも認知症がある人は、睡眠・覚醒リズムがさらに異常をきたし、昼夜逆転(睡眠相後退症候群)したり、時間に関係なく寝たり起きたり(不規則睡眠・覚醒症候群)するようになります。
認知症がある高齢者で、次の項目に当てはまるとき、昼夜逆転(睡眠相後退症候群)と診断されます。
・深夜~朝に就寝し、夕方~夜に起床する生活が、少なくとも1週間以上続いている。
・自然に眠りにつくと、睡眠の質は悪くなく、睡眠時間も十分である。
・睡眠と覚醒の時間帯が通常とずれていることが、本人あるいは周囲の人の不都合の原因となっている。
まずは生活習慣を改めましょう
昼夜逆転を治すためには、寝室の環境を整え、生活習慣を改善することが基本です。そのうえで、「時間療法」や「高照度光療法」を行います。医療機関で行う薬物療法は、高照度光療法の補助療法として行われています。昼夜逆転が軽症の場合には、生活習慣を見直すだけで、睡眠の時間帯が元に戻ることがあります。次の項目のうち、できるものからやってみましょう。
・朝、日光を十分浴びる
・目を覚ましたら必ず朝食をとる
・食事は1日3回、規則正しくとる
・日中には戸外で体を動かす
・仮眠はとらない
・夕食後はアルコールやカフェインをとらない
・寝つく予定の3時間前から照明を少し暗くする
・就寝前の1時間はテレビやパソコン、携帯電話の画面を見ない
昼は目覚めていて夜に眠るようにする
日光には、生体リズムを整える働きがあります
具体的には、まず、寝つく時刻を毎日3時間ずつ遅らせて、起床時刻も3時間ずつ遅らせます。そして1週間ほどで、目標とする起床時刻にします。望ましい起床時刻になったら、しばらくその状態を保って習慣化します。
残念ながら、時間療法は効果が約1カ月しか続かないことがあるので、高照度光療法や薬物療法を併用します。また、自宅で時間療法をするのは難しいことが多く、専門の病院にしばらく入院したほうが成功しやすくなります。
朝、目から入った強い光は、脳にある生体リズムの司令塔(視交叉上核)に作用して、生体リズムを早いほうにずらします。この働きを利用するのが、高照度光療法です。
専用の器具を使って、起床後に1~2時間、2,500~1万ルクスの光を浴びます。光を直接見つめる必要はありませんが、眠っていては効果がないので、必ず目覚めた状態で行います。
薬を使った治療法
医療機関を受診すると、メラトニン受容体作動薬やビタミンB12を処方されることがあります。メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンで、「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。メラトニンと似た働きをする薬が、メラトニン受容体作動薬です。
メラトニンには催眠作用のほかに、生体リズムをずらす効果があります。昼夜逆転の患者さんでは、生体リズムを早いほうにずらす効果を期待して、寝ついてほしい時刻の1~6時間前に飲んでもらいます。
日本ではメラトニンを使いにくいため、同じような効果が期待できるメラトニン受容体作動薬の「ロゼレム」が使われます(保険適応外使用)。高照度光療法と併用すると、治療効果が高まります。
ビタミンB12も処方されることがあります(保険適応外使用)。ビタミンB12だけでの効果は実証されていませんが、高照度光療法を行うとき一緒に飲むと、高照度光療法の効果を増強します。
【関連サイト】
昼夜逆転・睡眠時間帯の異常
11年ぶりの改訂!「健康づくりのための睡眠指針2014
睡眠障害で医師にかかるまでに準備しておきたいこと