チェーンドチューブ構法
一般的なタワーマンションはコア(中心部)にEVや階段を設け、周囲に住戸を配置するが、「虎ノ門タワーズレジデンス」は前述したような周囲環境を鑑み、東京湾側の開放感を得る方向に居住空間を集め、逆には設備スペースを配するアイデアを選択している。そのため、平面図は正方形(に近い形状)ではなく、矩形(長方形)となった(右参照)。「敷地周辺の環境」を考慮し、「利点の最大化」を図ろうとした結果、自ずと「建物の形状」が決まっていったということ。ここが重要な方程式のひとつである。
次に、眺望という超高層ならではの魅力を入居者が最大限享受するために、さらには居住空間の快適さをより高い次元で実現するための新たな構造を開発。それが「チェーンドチューブ構法」である。
1階平面図の柱を赤い線でつないだものが下の画像。通常なら、碁盤の目のそれぞれ交わる位置に規則正しく柱型が並ぶところ、この物件では短辺に柱を集めた。4つの矩形型の筒(チューブ)が寄り合って(チェーン)耐震強度を確保。居住性の面では、長辺側の窓幅の拡大や居住空間の快適性(専有部に柱がない状態)を獲得している。
「大開口」で開放感とデザイン性を両立
サッシュの高さは約2.1~2.3m。幅は約1.8m。サッシュの外枠は壁面に埋め込んだ「隠し框」。窓に映し出される眺望は風景を切り取った額縁のような印象に。長辺における窓幅の最大(三連窓)はじつに4.8mにも及ぶ。さて、その窓と構造(柱)を機能性だけでなく、外観意匠(いしょう)を構成する役割も付加したところに着目しよう。フォルム(建物形状)と、構造上の柱・梁、そして開口部(窓)という住宅に必要最低限の要素のみをもってして「デザインの基調」を完成。色彩によるコーディネートは一切排除している。塔状比1:7というスレンダーなタワーマンションは、至ってシンプルでモダンなイメージに仕上がった。
例えば、数少ない装飾のひとつにバルコニーがある。右上の平面図は、25階部分と26階~34階部分。下は(南東立面の)バルコニーを赤枠で囲んでいる。
柱と開口、そしてバルコニーまでがすべてシンメトリ(左右対称)。26階以上は、ともにバルコニーの数を左右ひとつずつ減らしているが、外観上の統一感を徹底したものと推察する。短辺側の立面も同様。外から見た姿を意識しているのがわかる。
だが驚くべきは、外観の必然で居住空間が決定付けられたわけではないこと。専有部を見れば、逆に「居住性を追求して窓やバルコニーを配置したのではないか」と思ってしまうのだ。その詳細は、次回の記事で解説を試みたい。
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