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Noism1&2合同公演 劇的舞踊『カルメン』インタビュー(3ページ目)

設立10周年を迎えたNoismが、記念公演として劇的舞踊『カルメン』を上演。Noism1&2合同キャストで送る大作であり、金森穣演出振付による注目の最新作です。ここでは、芸術監督の金森穣にインタビュー! 創作の発端と作品に寄せる想いをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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振付はどのようなアプローチで行っていますか?

金森>この10年間、作品をつくる過程でさまざまな手法を取ってきました。例えば、自分が動きながら振りをつくったり、みんなにテーマを与えて振りをつくってもらったり、実際に即興で動いてもらったり……。10周年だからという訳じゃないけれど、今回はその全部の手法を使っています。

2010年の劇的舞踊『ホフマン物語』で初めて3幕ものの作品をオリジナルの脚本を書いてつくりましたが、あのときは物語を伝えることに固執しすぎて、動きの妙や振付にあまりエネルギーが注げなかったという反省点が自分の中にありました。なので今回は早い段階からいろいろなアプローチで動きをつくっているし、実際いい振付になっていると思います。

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劇的舞踊『カルメン』リハーサル 撮影:遠藤龍
 

踊りの部分のアプローチとしては、特に新しい試みはなく、あくまでも過去に行ってきたさまざまな実験から得た知識、創作方法を総動員している形です。ただこの10年間にやってきた全てのアプローチに付き合ってきたのは佐和子だけで、他のメンバーは初めてなんですよね。例えば『SHIKAKU』や『black ice』といった初期作品のアプローチを今やると、みんなてんてこまいになる(笑)。

みんな佐和子を見ながら“こうやるのかな?”と動いてみたり、逆に知らないが故に彼らがやると新しいものが出てきたりしてすごく面白い。けれど、私がイチから10まで振付けすること、振付けされることに慣れているNoismに最近参加した子たちは、私に刺激を与えるという意識が低い。ワークショップで彼らが何をどのように提示してくるかが作品に影響する、彼らのアイデアや才能が作品に直結されることに対する自意識みたいなものを、もっと養って欲しいですね。

身体性という意味では、『NINA』のように物質化する身体ということでもないし、アカデミックなということでもないし、本当にいろいろな要素を取り入れているので、限定して言うことは難しい。ただ、Noismとしての身体性の根源において、日常的身体というのはありえない。そもそも専門家として日常的に鍛練している舞踊家が、身体の意識を最低限にもっていく為には、それなりの経験と集中力が必要な訳です。

ただ舞踊家が家でゴロゴロしているときの身体を日常的身体と思ったら大間違いなんですよ。それは堕落した状態の身体であって、何かを表現する為には客観的視座に立つことが重要で、最低限とは何かを問わなければならない。それにあえて最低限を取り入れている内はいいけれど、もはやそれも20年くらい前の話になってますよね。Noismではそれがどのようなアプローチであれ、専門家としての身体性をもって作品に挑みます。

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劇的舞踊『カルメン』リハーサル 撮影:遠藤龍


カルメンとホセという女性と男性の対比において、私自身がキーワードに掲げているのが、カルメンは野性であってホセは理性であるということ。原作にも書いてありますが、カルメンにはいわゆる社会人としてのルールがないんです。子供のような部分があって、ものすごく喜んでみたり、ものすごく拗ねてみたり、ものすごく怒っていたかと思うと、ものすごく愛らしくなってみたりする。カルメンの野性性ゆえに、小さい頃からエリートとして育てられ、軍隊に入って階級を上げることだけを目指して頑なに生きていた男が引っ張られてしまう。野性に理性が翻弄されてしまうんです。

ある過剰な喜怒哀楽が、野性性としてひとりの舞踊家の身体から発せられることに興味があるし、それを私自身も見てみたい。彼らからそれを得ることにより、私自身も今まで生み出せなかったものと出会ったり、自分自身の知らなかった面に気付けるのではと期待しています。

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