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Noism1&2合同公演 劇的舞踊『カルメン』インタビュー(4ページ目)

設立10周年を迎えたNoismが、記念公演として劇的舞踊『カルメン』を上演。Noism1&2合同キャストで送る大作であり、金森穣演出振付による注目の最新作です。ここでは、芸術監督の金森穣にインタビュー! 創作の発端と作品に寄せる想いをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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カルメンを演じるのは井関佐和子さん。
ご本人の念願叶ってのカルメン役となりますが……。

金森>私としては、初めから世間一般で考えられているようなカルメン像を佐和子にやらせようとは思っていませんでした。いわゆるカルメン的な格好をして、カルメン的な踊りをする佐和子の姿ってなんとなく想像できるから、それは面白くないなと……。

けれどメリメの原作を読んだら、私自身がそれまで抱いていたカルメンに対するイメージとは違ったし、おそらくみなさんが考えているものとも違ってる。この原作だったら佐和子から何か新しいものを引き出せるなと感じたし、これは佐和子という舞踊家に挑戦して欲しいと思ったんです。原作は言葉なので視覚情報はありません。原作、そして私の台本の言葉、私の演出から、佐和子がどのようなカルメンを生み出すかが楽しみです。ですから、みなさんが井関佐和子にイメージするカルメン像とはまた違ったものになると思う。逆にみなさんに驚いてもらえるようなものを提示しないと、こちらも面白くないですから(笑)。

佐和子は舞踊家として今すごく良い時期を迎えてると思う。内側と外側のバランスが取れはじめてる。バランスが取れているというと、安定してると聞こえるかもしれないけれど、そうではなく振り子がすごく離れた所で振れている状態。振り子の紐である精神が、いい緊張状態にあるんですね。それを存分に生かして欲しいし、いかに生かすかは演出家である自分にとってチャレンジでもある。やっぱり私自身驚きたいし、佐和子自身にも驚いて欲しいし、もっと輝いて欲しいという想いがあります。

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                   井関佐和子 撮影:篠山紀信


カルメン=井関さん以外も、役は設定されているのでしょうか?

金森>Noism1の公演はいつもそうですが、今回もメンバーの為に何がしかの役を設定しています。今のNoism1メンバーひとりひとりに、出来る限り役を付けたいと思う。それは私のカルメンではなくて、我々のカルメンをつくる上で重要なことなんです。そもそも脚本があってオーディションするのではなく、彼らがいる前提で脚本書いている訳ですし。

今このときに『カルメン』の原作と出逢った自分がいて、今このときにNoism1のメンバーと何ができるか考えた結果、執拗なまでに彼らに役を与える。与えるために、考える。そのプロセスは楽しいけれど、すごく大変でもある。いろいろ書き替えたりするし、悩んだりもする。これは端から見たら馬鹿みたいな事かもしれない。“もっと好きなようにつくれば"ってね。でも彼らはそのプロセスを通して私とでなければ生み出せないものを生み出し、私も彼らを通して新たな自分に出会う。それが集団活動の意義だし、大きな力なんです。

もちろん、舞踊家ひとりひとりに合った役というのが大前提。そのひとが見えないと、役は付けません。ただ、合うといっても、彼らが今できること、今までの作品でやってきたことは求めてはいない。“彼がこういう役をやったらどうなるかな”とか、“彼女のここを掘り下げたらもっと飛躍するんじゃないかな”とか、常に2~3歩先を見ているというか、彼らの2~3歩先しか見れなくて。だから、あまり褒められないんですよね(笑)。良くはなってるんだけど、もっと良くなるのが自分には見えるから、“もっとやれよ”って話になる(笑)。その場その場で褒めてあげられればいいんだけど、妄想が激しいから、“もっといけるんだよな……”ってなっちゃう(笑)。

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劇的舞踊『カルメン』リハーサル 撮影:遠藤龍


妄想を超えた先が、演出家としての醍醐味でもある?

金森>そうですね。やっぱり想像しないところで良くなると嬉しいし、こっちも興奮する。ひとりがパンと弾けると全体のバランスも変わって、自分に与えられる刺激もガラリと変わる。そこはすごく願うところだし、そのためにみんな日々集団でトレーニングしてますからね。


毎日一緒に稽古して知り尽くしているメンバーから、
新しい何かを引き出す作業はなかなか困難なのでは?

金森>そんなことはないですよ。プライベートの彼らまでは介入していないし、そこまで知り尽くしてはいないので。稽古場での彼らしか見てないし、稽古場での彼らというのは人間としての彼らの、ある側面にしか過ぎないというのは認識しているつもりです。人間ってそんな薄っぺらいものじゃないですから。

だからこそ、もっと驚かせて欲しいし、刺激して欲しいんですよね。人間としての彼らの中から私の知らないもの、彼ら自身も抑圧しているようなものを見出して、稽古場に吐き出して欲しい。“求められるものをやっていればいい”とか、“前これをやって評価されたから”なんて表面的なものはこっちの方がたまらない。そんなものは褒めもしないし、全部取り払おうとします。過去の彼らに興味はないんです。今、そしてこれからなんですから。だからみんな、大変なんでしょうけど(笑)。

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