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Noism1&2合同公演 劇的舞踊『カルメン』インタビュー(5ページ目)

設立10周年を迎えたNoismが、記念公演として劇的舞踊『カルメン』を上演。Noism1&2合同キャストで送る大作であり、金森穣演出振付による注目の最新作です。ここでは、芸術監督の金森穣にインタビュー! 創作の発端と作品に寄せる想いをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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本作には研修生カンパニー・Noism2も出演します。
物語の中で、彼らはどういう役割を担うのでしょう?

金森>Noism2はある種の群舞です。とはいえ、個々に立つシーンはいろいろと設けています。だって、“これは自分じゃなくてもいいのでは?”と思ってしまうようなものは舞踊家としてつまらないだろうし、こっちも見ててつまらない。彼らひとりひとりがそこにいる必然性がなければ、出演させなければいいよねってことになる。

だからそれがたとえ群舞であれ、舞踊家自身も自らの存在意義をそこに見出して、こちらを刺激して自ら光り輝かなくてはいけないんです。ただ、ここでいう光り方とは、自我で自ら光り輝く発光体ではない。すごく抽象的な言い方になるけれど、演出家や観客の視線の光を集めて乱反射する水晶体でなければいけない。

身体性にしても精神的にもNoism2に同じアプローチをしているので、彼らの方が面食らうだろうと思う。Noism1なら“Noismだし金森穣の作品なんだから最低限こうだろう”というのがあるけれど、Noism2はまず“Noismってなんだ?”から“最低限って何だ?”という戸惑いがあるだろうから。まあでもそれはNoism1メンバーでも新人は同じことだし、Noismという集団活動を理解する為にある程度の時間が必要だから、当たり前のことなんですけどね。

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劇的舞踊『カルメン』リハーサル 撮影:遠藤龍


学者役を演じるのは、SPAC-静岡県舞台芸術センター専属俳優の
奥野晃士さん。役者をゲストに迎えるのはNoism初の試みですが、
どういった経緯で彼に決まったのでしょう。

金森>SPAC-静岡県舞台芸術センターにまずこちらからお願いして、先方から推薦していただいた方がドンピシャだった。自分が書いていた脚本と、イメージがぴたりと繋がったんです。奥野さんにも稽古に参加してもらっていますが、まだ今は楽しい段階ですよね。お互い初めましてで、どんなことができるかいい意味で探りながら、遊びながらやっている訳だけど、これから磨いていく過程ではもう役者とかゲストなんて関係ない。みんなギリギリのところでやることになるから、奥野さんも当然そうせざるをえなくなるだろうし。

でも稽古初日は相当緊張してらしたようですよ。もうバリバリ筋肉痛になったって言ってた(笑)。こっちとしてはまだ全然そこまでの圧は入れずに、かなり穏やかにやったつもりなんですが……(笑)。厳しくする云々ではないけれど、この公演に関しては奥野さんも一蓮托生。みんなで高みを目指す訳だから、大変なのはここからでしょうね。

奥野さんも存分に身体を使ってもらうし、少し踊ります。鈴木忠志さんのもとでやっていた方だから、身体に対する意識はとても高いです。重要なのは、役者を用いるとしても、私にとってそれはあくまでも身体表現のひとつということ。彼が言葉を発しているときも、そこには呼吸を伴うし、立ち姿でも変わるし、声音もそう。そして何より舞台という同じ空間を共有する訳だから、舞踊家だからとか役者だからという以前にそこにある身体の強度という意味で共存しないとね。

近年では社会自体が理性化しているし、舞踊もどんどん理性化している。でも野性性というのは人間誰もが持っているものだし、舞台芸術において根源的な精神的エネルギーと関係している。ただ根源的なものだから、面倒くさいんですよね。要するに、理性で覆い尽くされているものの中に下がっていかなきゃいけないから。社会生活がどんどん非身体化して理性化している状態の中で、あえてこの身体と向き合い、その野性性や舞踊の根源的な力を再発掘したいと考えています。

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                        奥野晃士


設立10周年記念公演となる本作。
日本唯一の劇場専属舞踊団として10年間Noismを率い、今思うところとは?

金森>10年間続けてきても、いまだに“じゃあ自分たちも”という次の舞踊団が出てこないのが寂しいんですよね。まあ舞踊団がそう思っていても、自治体や劇場の指定管理者が“やりましょう”とならないのが現状なんだろうけど。ただ自分としては、“自分がああだこうだしても仕方ないだろう”と思うようになっていて……。

ならば他の舞踊家たちと会って“やりなよ”と言ったり、様々な劇場関係者に“やってくださいよ”と言って回ることにエネルギーを裂くよりは、自分がやらなきゃいけないこと、自分の周りにあることをもっともっと磨いていくべきなのではと。それは新潟で私たちに出来ることをもっと追求して、全身全霊でやるということでしかない。舞踊団活動が文化政策として自治体に認識されること。それにより自治体を国が文化都市として認識すること。そうすればいつしか国も他の地域も、劇場専属舞踊団の価値を認めてくれるかな……。まあ要するに、他の地域のことより、新潟でもっとやらねばと思いはじめているところです。

 

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                            金森穣 撮影:篠山紀信




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