渋沢栄一氏の「終の棲家」
いま一度「王子」駅改札口に戻って、今度は明治通りを渡らずに左手方向に進む。すると、弧を描くようなレールの上を走るゴンドラの駅が見える。約2分かけて山頂に運んでくれるのだ(無料)。南北に細長い「飛鳥山公園」は、登頂してから散策できるじつに開放感に満ち溢れた施設である。花畑に桜の大樹、石碑なども展示されていて歴史を感じさせる。また、博物館も数棟立ちならび、じっくり堪能しようとすると半日はかかるだろう。
必見は旧渋沢栄一邸である。自然豊かな高地の南寄りに、本館の他迎賓館や書斎を建てた。当初別荘として使用した後、本宅となり事実上の終の棲家になったということである。海外の要人も多く招き、実質的に民間外交の拠点として使われたようだ。日本の魅力を伝えるに相応しい条件を有していたのである。現在残された一部が公開されている。華美ではないが、その居心地の良い空間が体感できる。
緑の借景を望む建物
地形の織りなす自然に、それらをいかした文化風習。飛鳥山の桜、名主の滝と「王子界隈は、江戸時代の大レクリエーションセンターだった」(江戸東京学事典)というが、地理的なトピックとしてやはり付け加えなければならないのが「音無親水公園」である。江戸の発展に寄与した上水のひとつ「石神井川」のほとりでは、水に親しむ人たちでにぎわったそうだが、それにちなんで平成初期に「音無親水公園」が整備された。現在では石神井川から公園内を流れる小川として一部川水を引き込んでいるが、夏場は別途循環ポンプで水流を設け、子どもたちの遊び場として提供している。
さて、駅前から緑の連なる「音無親水公園」の先に、コンクリート打ち放しのデザイナーズマンションがある。館名には「清音閣」とある。キューブ型の住戸を積み上げた外観は、「ビラビアンカ」や「中銀カプセルタワービル」まではいかないまでも、見るものに十分インパクトを与える個性を放っている。ランダムにセットバックする空間に植栽を施し、あたかも公園の緑地が上空に伸びていくかのようで、景観を意識して設計した意図が推察できる。歴史的背景を継承して再現された公共の自然が、良質な建築物を生んだものと解釈したい。
「王子飛鳥山ザ・ファースト タワー&レジデンス」は、JR京浜東北線「王子」駅徒歩1分の交通利便性に長けた物件である。がしかし、その優位性もさることながら、希少性を覚えたのは他ならぬ緑と歴史に満ちたロケーションであった。そのひとつ「飛鳥山公園」を南方向に臨む建物に関しては、タイトルを分けて解説を行う。
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