東京23区、現存の滝

名主の滝

名主の滝

JR京浜東北線「王子」駅の改札口を出る。すぐ目の前の高架下を明治通り(環状5号線)が横断しており、一瞬、駅の状態が把握しづらく混乱させるが、渡ってしまえば駅前ロータリーのある、雑居ビルひしめく繁華街である。

線路と平行に北へ行く。すると5分ほどで、たいそう立派な門構えの公園がある。「名主の滝公園」である。江戸時代には「滝浴み(たきあみ)」といって夏の暑さをしのぐ習慣があったそうだ。当時は大勢の人がここを訪れたらしく、園内には今でも複数の滝が保存されている。

なかには「男滝(おだき)」のように豊富な水量を放っているものもあるが、目黒不動や等々力渓谷のような湧水ではなく、ポンプで放水する滝である。しかしながら、その落差には圧倒された。最も高いところは入口付近の7階建てマンションを超えるくらいだから、20メートル以上は優にありそうだ。途中、王子稲荷神社を通るが、こちらも崖をいかした建造物に見受けられた。急勾配の土地は自然を残し、あるいは歴史的建造物と一体となって長らく地元に親しまれてきた様子が伺えるようである。

男滝(おだき)

男滝(おだき)


台地と低地の崖線

飛鳥山公園から現地を望む

飛鳥山公園から現地を望む

関東平野は、西の台地と東の低地に大別される地勢が特徴である。都心部で標高30m前後の武蔵野台地は、その突端部が俯瞰すれば手の様に見えることから山の手と呼んだ。低地には荒川(隅田川)が流れ、東京湾へ注ぐ。

独立行政法人防災科学技術研究所が提供する「地震ハザードステーション」の<表層地盤>では、軟弱な地盤と堅固な地盤が一目瞭然だが、台地と低地の境目を、JR京浜東北線がなぞるように走っているのがよくわかる。

またその境目は、坂の多さが示す通り起伏の激しさが特徴的なのだが、なかには崖地(がけち)そのものと言える場所も少なからず点在する。その様なところでは、不動産開発も困難であるため、古くからの自然がそのままに残されているケースがあり、王子界隈はまさにその典型といえよう。象徴的なのが、王子駅西側に鬱蒼と茂る森がそうだ。「飛鳥山公園」である。