栄養管理/栄養管理の基礎知識・食事バランスガイド

命に関わることも…貧血を食べ物で改善するコツ

「私、昔から貧血気味なの」と言うわりに、何の対処もせずに放置している人が多いようです。貧血症状の放置には、実は命に関わることもある大きな危険が潜んでいます。また、鉄分不足によって起きる貧血には、とある栄養素の不足も関係しています。貧血を改善する食べ物、食事のコツもしっかり理解しておきましょう。

一政 晶子

執筆者:一政 晶子

管理栄養士・米国登録栄養士(RD) / 栄養管理・療養食ガイド

「私、昔から貧血ぎみなのよね~」。周りから何度も聞いたことがあるフレーズですが、私としては「何で放置してるの!」とツッコミを入れたくなります。今回は、貧血を放置することで起きる、日常生活でのデメリット、そして命を左右しかねない危険性について解説します。鉄分不足の貧血は、実はとある栄養素の不足が関係しているのです。食生活からしっかりと見直していきましょう。
 

ガン見落としの危険性も!? 貧血を放置する危険性・デメリット

もったいぶらずに命を左右する危険性から説明したいと思います。まずは、貧血のリスクがある人を見て下さい。
  • ダイエットをしている・カロリーを抑えている人
  • 月経のある人、または高齢者
  • ベジタリアン・菜食主義者・肉や卵などを十分に食べない人
  • お酒をたくさん飲む人
  • ガンなどの病気がある人
  • 腎臓病・肝臓病・セリアック病・クローン病などがある人
どうでしょうか、2~3個以上当てはまる人も多いのではないでしょうか?
 
だるい

今日もだるいわ。でもいつもの事よね。

貧血の症状には、だるさ、息切れ、ふらつき、疲れ、立ちくらみ、いらいら、注意散漫などがあります。どれも女性がよく経験する症状です。症状がひどくなり病院に行ったとします。もしもあなたが「昔から貧血気味」「食事からの鉄分が足りないかもしれない」と思ったり、それを医療者に伝えた場合、見落とされる可能性がある病気は何だと思いますか?

それは日本人の死因の1位であるガンです。「もともと貧血」「食事からの鉄分が足りていないかもしれない」という先入観が大きすぎて、貧血以外の重大な病気が見逃されてしまったケースをガイドは何回か見てきました。特に女性の間では、貧血を軽く考えがちというか、悪く言うと、「か弱い」ことを美化する印象を受けることもあります。貧血は放置せずに改善しましょう。

(注)この記事では食事からの鉄不足による貧血を説明しています。種類の異なる貧血へのアプローチは以前のガイド記事「貧血の栄養療法・食事」をご覧下さい。
 

貧血症状を改善するメリット

貧血

貧血で損していることがいっぱいあるわ・・・。今日もやる気ないわ。

上記の繰り返しになりますが、だるさ、息切れ、ふらつき、疲れ、立ちくらみ、注意散漫などはどれも女性がよく経験する症状です。

これらの症状から解放された自分をイメージしてみて下さい。体が元気になり、日々の仕事や暮らしが楽しくなるはずです。

国民健康・栄養調査によると、女性の場合、食品から1日平均7.3 mg、強化食品・補助食品から平均0.3 mg摂取しているそうです。月経のある成人女性の鉄分摂取推奨量は、1日10.5mg~11mgです。女性の平均摂取量と比較すると1日当たり約4mg不足しているということになります。
 

貧血改善に鉄分補給! 鉄4mgを補給する食べ物は?

「鉄4mg」を補うために、食べる必要がある食べ物の量は、以下が目安です。
  • 納豆1パック、卵1個、豆乳コップ1杯で、鉄分4mg
  • まとまった量の牛肉(部位によるが150~200g)で、鉄分4mg
たかが4mg、されど4mgですね。なるほど鉄分が不足しやすい訳です。次に鉄分の多い食べ物の表を見てみましょう。
 
鉄分

鉄分の多い食べ物


鉄分の多い食べ物のほとんどが、たんぱく質が多い食べ物であることがわかります。
 

結局どうやって十分な鉄分を摂取するのがベスト?

ズバリこれです。鉄分が不足しがちな背景には、「たんぱく質」が不足していることが考えられます。たんぱく質を十分にとれば、鉄分もしっかり摂りやすくなるということになります。更に、野菜をしっかり食べることでビタミンCの摂取量がアップし、鉄分の吸収率も改善されます。

かなり大ざっぱな計算になりますが、女性の場合、1日に必要なたんぱく質の量は約60g。そうすると1食につき、たんぱく質を20gとることが目標になります。ご飯・野菜・果物から摂れるたんぱく質は約5gくらいでしょうから、残りの15gは肉、魚、卵、豆・卵などから摂ることになります。
 
たんぱく質

え~、たんぱく質不足が鉄分不足になるんだぁ。たんぱく質はダイエットにも大切よね。

食材によってたんぱく質の含有量が異なりますが、1食に付き100~200g分のたんぱく質の多い食材を食べれば(大きさの目安として卵2~4個分)、たんぱく質が平均的に15g程度とれるのではないかと思います。動物性のたんぱく質ならば100g(卵2個分の大きさ程度)、植物性のたんぱく質ならば200g(卵4個分の大きさ程度)が目安です。たんぱく質の多い食材をしっかり食べれば、鉄分も推奨量である10.5mg~11mgを摂りやすくなると思います。

例えば、朝食に卵1個と納豆1パック、豆乳コップ軽く1杯、昼食に魚(卵1個分の大きさ)、煮豆と豆腐(卵2個分の大きさ)、夜はお肉を100g(卵2個分の大きさ)を含んだ食事にします。植物性と動物性の鉄の吸収率の違いがよく語られますが、吸収率にとらわれずに両方のタイプを楽しむのが一番だと思います。

食事からの鉄分不足による貧血は、実は食事で必要な栄養素、特にたんぱく質が摂れていない、という目安にもなります。特にダイエットをしている人、「ヘルシーな食事」を心がけている人では、少し乱暴な言い方ですが、鉄不足による貧血があるかどうかを調べることで、栄養バランスをテストできる、とも考えられます。

次に、鉄分の多い食べ物に関する、よくある勘違いを紹介したいと思います。
 

牛乳は鉄分が多い?

答えはノー。鉄分を添加していない限り牛乳にはほとんど鉄分は含まれません。ヨーグルトも鉄分が添加されていない限りほとんど含まれません。しかし、なぜか牛乳は鉄分が多いというイメージがあるようです。乳児・幼児が貧血の場合、乳製品の摂り過ぎで、他のものが十分食べれていないというケースは小児現場でよく見られます。
 

ごま、パセリ、切り干し大根は鉄分が多い?

答えはノー。ごまは確かに100g食べれば鉄分が約10mgとれます。しかし、ごま100gは大さじ15杯分で、615キロカロリー。これは、ごまを1袋、または1瓶全部食べるくらいの量です。一度に食べる量を考えると、ごまは残念ながら鉄分が豊富ではありません。

パセリもまた100g食べれば、鉄分が7.5mgとれます。お料理の飾りつけに使われるパセリは約1gです。よって100g分のパセリはバケツ1杯分に近いくらいの量になります。ごまと同じくパセリは鉄分が豊富ではありません。

切り干し大根も100g食べれば、鉄分が約10mgとれます。スーパーなどで売られている切り干し大根は、1パック50gくらいが一般的です。2パック分も調理すれば、切り干し大根は水を吸収して相当な量になってしまいます。

■まとめ:貧血症状を改善する食生活のポイント
1食に付き100~200g分のたんぱく質の多い食材を食べ(大きさの目安として卵2~4個分)、貧血&たんぱく質不足を防ぐ!
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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