開講して二年近く経ちます。先生方からみた塾生の成長、手応えはいかがですか?
(C) TOKIKO FURUTA
女の子たちは20歳近くになってから入った子が多いので、塾に来た時点である程度自分の形というのができてしまっていた。もちろんそれを否定する訳ではありませんが、上達を目指す上で直した方がいい部分が多々あって、そこにちょっと時間がかかっている感じです。やはり20歳くらいになると、いろいろクセも付いてしまってるので、そこが難しい部分でもありますね。なので、まだ15歳~16歳で来てくれた方が直しやすいのですが……。
志賀>20歳くらいになると、精神的にもある程度プライドが出てくる年齢なので、こちらとしてもそういう部分の邪魔をしてはいけない。なかなか素直に受け入れられなかったりと、生徒たちの中でもやはり葛藤があるようです。16歳の男の子はまだ何も持っていなかったので、イチから教えれば何とか形になるし、進歩も早い。ひとりひとり違う課題がありますが、それぞれに対応した教え方を考えています。生徒はみんな大分変わってきていますね。
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志賀>私たちが現役で踊っていたときのバレエ界は黄金期と言えるような、素晴らしいダンサーが沢山輩出された凄い時代で、良いとされるレベルが相当高かった気がします。環境が違う今、すぐに同じことを求めるのは難しいと思うので、今の生徒たちの条件がまずあって、そこから上のレベルに持っていければと……。
あと、今は何処のバレエ団でも身長がないと入団するのが難しくなっていて。身長の高さが必須条件で、小さかったら特段に踊れないと厳しい時代になってきてる。身長の低い生徒にはそう伝えているんですけど、危機感を持っているようには感じられません。なかなか響かないんですよね(笑)。
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精神面はいかがですか? 先生方の時代と今の子たちとでは、
違うなと感じる部分はありますか?
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志賀>今の子は自分で考えて自分でやるということができないんです。真面目ではありますが、意欲的ではない感じがします。
森田>注意されるのを待ってるんですよね。例えば回転が出来なかったら“何で回れなかったのかな?”って自分で考える前に、“何で回れないんですか?”ってこちらに聞いてくるような、何か言ってくれるのを待ってるような部分がある。凄く受け身なんです。
僕らの時代は周りに踊れる子が沢山いたので、“ああいう風に回りたいな”とか、“くそ、負けないぞ!”とか、いい意味でのライバル意識があった。またそれが、上手く相乗効果になってお互い成長できたんです。だけど、今の子たちを見てるとそういうのがなくて、仲良しグループみたいな感じ。“なんかあの子すごーい”なんて感じで終わっちゃってる(笑)。だから風が吹かないし、稽古にあまり活気がないというか。先生に言われて、はい、はい、と言うだけ。
僕らは毎回毎回全力でやったものですけど、しんどそうな顔も見せず、ハァハァ息が上がってる子もいない。みんなセーブしてるというか、稽古にしても一回一回を全力で踊ってない。“きっともう一回やれって言われるから、そのためにちょっと力を残しておこう”って感じに見えちゃうんです。その辺が、僕らからするとちょっと解せないというか。みんなやればできるんですよ。でも“やれ”と言わなきゃやらない。それは塾の生徒たちだけではなく、バレエ団の若いひとたちもそう。そこが見てて、歯がゆいというか……。
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A.M.ステューデンツもそうですが、やっぱり見てると気持ちが強い子の方が最後は残るし伸びますね。やっぱり強くないとダメ。“我が道を行く!”というくらいの方がいいのかなって思います。指導者としては、ちょっと扱いずらいですけど(笑)。
森田>指導の仕方も難しくて、今の子には厳しい言い方が出来ないんですよね。
志賀>褒めないとやる気が出ないし、でも褒めたらフニャーッてなっちゃう(笑)。私自身は、牧先生に褒められたことなんてないですから。本番を終えて自分では凄く上手くできたなと思っても、牧先生に会うと“あそこ何よ!”と言われて、“また言われた!”なんて思ったり(笑)。いつもそんな感じで、牧先生は厳しかったですね。私には特に厳しかったかもしれない。
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牧先生も最近は教え方を気にされていて、生徒に対して“こういう言葉使いはしちゃいけない”とか、“こういう言い方はしちゃダメ”と言われます。
志賀>私は結構厳しいです。森田先生のほうが穏やかですよね。
森田>別に柔らかくしてるつもりはないんですが、全員が厳しいと生徒たちも息が詰まちゃうだろうと。全体として、バランスが取れていればいいかなと思ってます。
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