再開発タワーマンションの先駆け
五反田から「開東閣」(港区高輪)を迂回し、品川方面へ向かう道を「八ツ山通り」という。以前は沿道にソニーのオフィスが集積していたことことから「ソニー通り」とも呼ばれた。八ツ山は隣の御殿山とともに城南五山の一画をなすが、削り取られた今となっては大きく隆起した地勢を確認することはできない。八ツ山通りの南側はかねてより大規模な再開発「大崎副都心計画」が進行中である。JR「大崎」駅までの一帯は規則正しい碁盤の目状の道路が早くから完成している。当該エリアで初期に竣工した街区が「オーバルコート」。分譲住宅棟「ザ・パークタワー東京サウス」(2001年竣工・30階建て239戸)がある。
所在地は品川区東五反田2丁目。交通アクセスは山手線「大崎」駅から徒歩3分、同「五反田」駅から徒歩6分。都心の基幹交通網であるJR山手線の2駅から徒歩10分圏内(しかも片方は5分以内)にもかかわらず、物件名にはどちらの名称も組み込まれなかった。当時はまだ、とくに大崎は工場の多いところという認識だったことが影響したのではないかと思われる。
時代の先をいく超高層マンションに
だが今はどうだろう。大崎駅はりんかい線も開通し、湾岸地域への中継点としてのイメージが定着したのではないだろうか。朝の通勤時間帯などは山手線から乗り換える人が多数いて、人の流れが大きく変わったことを印象付ける。駅南口も様変わりした。マンション名に大崎を取り入れたのは、駅直結のツインタワー「大崎ウエストシティタワーズ」。販売活動は順調のようで時代の変遷を象徴するプロジェクトといえよう。さて、当該地区を眺めていてあらためて思うのは「ザ・パークタワー東京サウス」の景観に合ったデザインと今だ色褪せることのない専有部の設計である。
(目黒川から川を背に北進し)正面に捉えたときの第一印象は、安定感のあるフォルムからくる正統性とでも言おうか。水平断面がほぼ正方形の建物(右上画像、右下平面図)は、南立面中央部だけがアール状に少し膨らみを見せている(下の画像)。上層のみ四方に突き出たコーニス、アースカラーと緑青(ろくしょう)のやや薄い色合い、そしてアスペクト比(塔状比)。いずれも(電柱もなく並木の整備された)街並みとのバランスが絶妙に映る。