母娘関係では、「母側の憂うつ」も深刻!

ここ数年「母と娘」が抱える微妙な関係について、注目が集まっています。母親に依存される「娘側の憂うつ」を伝えるものが多いのですが、実際には、成人してからも娘から頼られる「母側の憂うつ」も深刻なものです。

その代表的なものに、「キャリア娘」と「支える母」の微妙な母娘関係があります。私が見聞きしてきた、事例の一部をお伝えしましょう(プライバシー保護のため、細部を変えています)。

事例1: 「私は娘の召使い!?」――家事・育児はバアバの仕事

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思う存分キャリアを追究する娘。一方で、老母は娘家庭のおさんどんに追われる

小さい頃から優等生だったA子さん(40歳)は、母であるF美さん(65歳)の自慢の娘。A子さんは大学卒業後、新聞社に就職。結婚して子どもを出産してからは、フリージャーナリストとして夜も昼もなく、全国を走り回って働いています。

そんなキャリア娘を支えるのが、老母のF美さん。娘の家庭を切り盛りするため、毎日、娘の家に通って家事全般を引き受け、孫の保育園のお迎えや保護者会行事にも出席してきました。

初老の友人たちが、やれ「旅行だ」「登山だ」と楽しんでいるのを尻目に、F美さんは相変わらず娘を支え、家事・育児に追われる毎日。孫が年長になり、「小学校に入ればやっと自分の時間が持てる」と期待していた矢先に、娘のA子さんが第2子を妊娠。「2人目の世話もお願い!」と娘から頼まれると、何も言えません。

2人目の子が生まれて小学校に上がるまでは、最低でもこの先8年間は、娘の家に通い続けなければなりません。そのときF美さんは、73歳になります。「何の躊躇もなく仕事に邁進する娘を見ると、時々やりきれなくなることもあるんですよね……」とため息をもらすF美さんです。

事例2:「孫育て」から解放されて、心に急に穴が空く

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70代になって「怒涛の孫育て」から急に解放され、何をしたらいいのか戸惑う老母

都内に暮らすJ子さん(70歳)は、大学病院の正看護師として夜勤もこなす娘のY香(46歳)さんを支える母。忙しい娘に代わって、娘の家庭の家事はもちろん、2人の孫の世話も近所に住むJ子さんが全面的に担当してきました。そんな孫たちも、上が中1、下が小5に成長。最近では、兄弟だけで夜の留守番もでき、母のY香さんがいないときには、冷凍食品を温めるなどして、夕食も食べられるようになりました。

孫育てから解放されてほっとしたのもつかの間、急に空虚な気持ちに襲われるようになったJ子さん。何しろ初孫が生まれて以来、13年間という長きに渡って娘の家庭に通ってきたのです。急にその任務から解放されても、何をしたらいいのか分かりません。気がつけば、ご近所や昔の友人との縁も遠のき、今さら関係を掘り起こすのも一苦労です。

かといって、用もないのに孫の顔を見に行っても、塾や部活で忙しく、なかなか会うこともできません。娘は子どもたちの学費を稼ぎ、「看護師長」という夢を目指して、より一層仕事に邁進しており、老母につきあう暇もありません。急に自分の役割が分からなくなり、途方に暮れてしまうJ子さんなのでした。