「働く母」の現実は、「母の内助の功」があってこそ!?

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キャリア娘の帰宅後は、「バアバのあったかご飯」が待っている幸せ

先の2つの事例を見て、どう感じられましたか? 女性の社会進出が本格化し始めた80年代後半以降、キャリアを確立しつつ、育児を両立させる女性が増えてきました。とはいえ、それも実家、特に「母の内助の功」があってこそ成り立つケースが多いものです。

日経ウーマンオンライン「業界別・女性管理職の子育てとの両立事情」(平均年齢44.78歳、2011年)によると、管理職に就く女性の13.3%が「自分の実家のバックアップ」によって仕事と家庭の両立を図っていると回答。「金融・保険業」では26%を越えています。単一回答であるため、保育園などの「子育て支援サービス」の利用の選択の割合が多いのですが、複数回答の場合、「実家」の割合が上記の回答より多くなると想像できます。

好きな仕事を続けながら、結婚も出産もつかむ。これは多くの女性の理想です。とはいえ、1986年の男女雇用機会均等法施行以前に成人になった女性で、キャリアと家庭を両立できた人は一握り。憧れがかなわなかった母親世代にとっては、結婚した娘のキャリアを支えることは、自分の青春を再構築するほどの特別な意味を持っているものです。
 

孫育てに追われるうちに、セカンドライフが減っていく!?

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初老は子育てを卒業し、やっと「自分の時間」を楽しめる時期

とはいえ、結婚して一家を構えた娘をサポートし続けることは、母親にとってさまざまな危機をはらんでしまうものです。

まず、老母が「孫育て」にあたる50代後半から60代は、老後生活の助走期間ともいうべき大切な年代です。多くの人はこの期間に、自分自身の自立した老後生活への準備を始めていきます。昔の趣味を再開し、行けなかった旅行に出かけてみようかと意欲が湧くのも、健康度の高いこの年代だからこそ。孫育てから解放される70代頃から始めても、体の不安が先立ち、思い切ったことはなかなかできないものですし、新しい交友関係を築くのも、容易なことではありません。つまり、娘のサポートに追われているうちに、自分自身のセカンドライフが減ってしまうリスクがあるのです。

また、キャリア娘をサポートしても、娘からの「優しい恩返し」が期待できるとは限りません。母が「自分の夢」としてキャリア娘を育ててきたなら、バリバリ働きながら家庭を築いている現状そのものが、娘本人にとっては「母の夢をかなえてあげている」ことになります。娘は、「私は、『自慢の娘』としてこんなに頑張っている。その上、大好きな孫にも毎日会わせてあげて、親孝行している」と、都合よく考えているかもしれません。そんな娘に恩返しを期待しても、「まだ私に何かやれと言うの?」と反感を持たれるだけかもしれません。
 

老母が娘の家庭に介入するリスクとは?

さらに、老母が娘の家庭の面倒を見過ぎてしまうことで、母娘それぞれの自立が損なわれるという危機もあります。結婚した娘の家庭に老母が介入することで、「何でも母任せ」の環境になると、娘に「妻や母」としての自覚が育ちにくくなるからです。これでは、勉強のために母にすべてを頼り切っていた学生時代と、大差はありません。また、こうして実母に頼り切っている妻、義母が介入してくる家庭を、娘の夫はどう思っているでしょう? 小さな疑問から、夫婦関係の亀裂が生じることも少なくありません。

一方で母の側も、「自分の人生を懸けてきたのだから、老後は全面的に娘に頼れる」という甘い期待を抱きやすいものです。本来は老い始めた頃から、自立したセカンドライフを自分自身で築いていくものですが、娘のサポートに追われて過ごすことで、「いずれは娘が何とかしてくれる」と依存的な気持ちを強くしていく人が少なくありません。とはいえ、先にも述べたように、娘が「私は既に恩返しをしている」と思い込んでいる場合、急に冷たくされる悲劇もあります。

では、キャリア娘をサポートする母がメンタルリスクを減らすためには、どうしたらいいのでしょう? 次のページで考えてみましょう。