どの部屋を誰が使う?
先週公開した「マンションのブランド力を量る方法」において立地の特徴を最大化できる建物が理想としたが、おかげさまでこの記事は思った以上の反響だった。そこで今回は、その第二弾として「制約を抱えつつも思い切った室内設計を施した間取り」を取り上げたい。一般的に高評価を得やすい専有部というのは、角住戸やワイドスパン(広い間口)で、PP(プライベートパブリック)分離の効いた中入り玄関が多くなる。しかし、今回の例はそのどれにも当てはまらない。中住戸で、ウナギの寝床とまではいかないが細長い(縦横比率の)形。玄関扉も開放廊下に面するタイプだ。
面積は115.35平米。2LDKで大きな収納庫が付く。立地は西に葉山マリーナが隣接する、いわゆるシーサイドビュー。洋室(1)は1822もの特大バスや洗面室とダイレクトにつながっている。ベッドの上からでも海が見える設定だ。洋室(2)はゲスト用か、あるいはある程度年齢が高いお子さま用だろう。シャワールームを設け独立性を重視。大きなウォークインクロゼットのおかげで書斎コーナーも余裕で作れそうだ。玄関ホールやキッチンも広い。
ライフスタイルが湧き出る空間
2つの居室が十分な広さを有していることは図面から瞬時に伝わるはずだが、採光通風でも配慮されているのがお分かりだろうか。とくに、窓のない主寝室(洋室1)は、開放感を重視したつくり。外の風景とセットになって、視界に入るカウンター下の棚にも注目。プライベートなディスプレイは雄大な自然が背景に。真っ平な天井も気持ちよく、ルーバーの引き戸を開け放てば空間の一体感が生まれる。「2バス2トイレ」は高級マンションのお約束ともいえる仕様。しかし、この広さでもこだわった理由は、土地柄マリンスポーツを楽しむ顧客が多そうだとの見立てから。週末利用や友人を招いてのパーティにも活躍する20畳大のLDもターゲットがイメージがしやすい。別荘利用が多そうだが、リタイア後はこちらを本宅にするオーナーも多いのではないかと推察する。
共用部のこだわりと違い
間取りは自由に変えられる。たしかにその通りだが、ライフスタイルを追求した空間は間仕切りがすべてではない。奥行2.6mのバルコニー、柔らかくも質感を思わせる木調の軒天(バルコニー部の天井)、開放感のあるガラス手すり、極力視界を遮らない幅広の窓ガラス(縦ラインのサッシュの少なさ)。すべて共用部である。さらに重要なポイントは柱と梁の位置。室内を邪魔していないことは右の画像(4階住戸)からも理解できるが、扁平型にしている点に着目しよう。とくに梁。この画像を見る限り、まるで壁式構造のようにスクエアですっきりとした壁と天井である。天井の高さはLDで2600mm(4階)だが、それ以上のゆとりを感じたのは下がり天井がほとんどないためで、天井埋め込み式エアコンも平らな天井に収まっていたことを付け加えなければならない。海の見える場所に家を持ちたかった人がストレスなく使える空間を制約の中で実現させた間取りである。
資料提供:三菱地所<パークハウス葉山翠邸>
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