リーダーシップ/リーダーシップの基本知識

“カリスマリーダー”を目指すのは危険!(3ページ目)

多くの人が「ああなりたい」と憧れるカリスマリーダーが、今、危ない。リーダーシップが強いリーダーですら、チームをゴールに導けなくなっています。そのカラクリを今回は書きたいと思います。

中竹 竜二

執筆者:中竹 竜二

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急に敵がパワーアップしたら、戦略はガタガタに

これまで、多くの世界で、このようなカリスマ的なリーダーシップが理想とされてきました。しかし、「リーダーにこそ、フォロワーシップが必要な理由」で書いたように、今は社会や経済の環境が大きく変わり、変化のスピードがぐんぐん速くなっています。

それは、たとえばこういうことです。赤鬼が足に帷子(かたびら)を付け、青鬼は頭に甲冑をかぶり、黄鬼は体に油を塗ってきたら……。

犬は赤鬼の足にかみつくことができず、キジは青鬼の頭を攻撃できない。猿はぬるぬる滑って、黄鬼の体に登れない。これは、ビジネスの世界で言えば、競合他社がより競争優位の高い新製品を出した、あるいはより顧客のニーズによりフィットした提案をしてきた、というような状況です。


戦い方がわからない「悪魔」が登場することも……

また、鬼だけかと思っていたら、急に悪魔が出てきた、というケースも考えられます。鬼に対する戦い方は熟知していても、悪魔はどんな武器を持っているか、まったくわかりません。PCを作っていたアップル社が、iPodやiPhoneを市場に投入しました。携帯音楽プレーヤーや携帯電話を作っていた会社にとって、異業種から思いもよらない敵が参入してきたわけです。この例が、「突然現れた悪魔」にあたるでしょう。

このとき、「この武器を使って、こう倒せ」と戦略を実行することを教え込まれた犬、キジ、猿は、思わず「教わっていないから、どうしたらいいかわかりません」とリーダーのところに聞きにくるでしょう。


「最近の若者はなっていない」と言っている場合じゃない

「こんな、単純でバカなことは実際にはない」と、皆さんは思うかもしれません。でも、部下や後輩、チームのメンバーに、「競合がすごいプラン出してきたんですが、どうしたらいいですか?」「まさかあの会社があんな商品を出すとは。打ち手がありませんね」などと言われたことはないですか? これは、冒頭の「教えられていません」問題と、その本質は同じです。

何をどのようにすべきか。リーダーが常にメンバーを引っ張り、「正解」を教えられることに慣れてしまうと、このようなことになります。「最近の若者はなっていない」と、メンバーに責任をなすりつけている場合ではありません。


「正解」を与えてしまっていませんか?

私はカリスマリーダーや、強いリーダーシップを決して否定しているわけではありません。要は、ゴールを達成できればいいのです。早稲田の私の前任者・清宮克幸さんのような、非常に優れた戦略を常に繰り出せる本当のカリスマリーダーがいれば、選手たちは彼の言うことに忠実に従うことで勝つことができたのです。

しかし、多くのリーダーは私を含め、この変化の激しい時代のなかで、常に素晴らしい戦略を打ち出し、明確な指示を与えることはできません。すると、犬、キジ、猿のように打ち手を失ってパニックに陥り、どうすることもできず退散するか、ともすると敵に倒されてしまいます。

部下が指示待ちなのも、ゴールを達成できないのも、つまり、「常に“正解”を与えてしまう上司」「実際には“正解”ではない指示を出してしまう上司」の問題なのです。
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