高級マンション/高級マンション選び

マンションの植栽からわかること、本来の楽しみ方

植栽の樹種を決めるのはデベロッパー。だが、引き渡し後は管理組合の意思次第。選定の条件と木々がもたらす経年の魅力は連動しているのだろうか。

坂根 康裕

執筆者:坂根 康裕

高級マンションガイド

 

植栽の役割

ヤマモミジ

ヤマモミジ

「挨拶に来たからひとつだけ要望を出した」。マンション着工前、近隣挨拶先のオーナー談話である。「どんな建物にしようと構わないが、まわりに花を植えて欲しいと言ったんだ。年中絶えないようにしてくれと」。タワーが立つと方角(場所)によっては日陰の時間が長くなることや工事中の騒音、道路使用に関することで了承を得るのに時間を要する場合があると聞くが、この意外な申し出には流石にデベロッパーも面喰らったのではないだろうか。

その甲斐あってか、そもそも計画されていたのかは定かではないが、当該物件の東の空地(くうち)には、大きな花壇に365日色とりどりの花が咲いている。敷地の高低差をいかして南境界沿いには小川を、西側には車寄せや噴水をしつらえた。公開空地に大きな樹を植える例はあっても、小さな草花を一面に敷き詰める例は珍しい。渋谷の街なかだからこそ、せせらぎの音もまたステイタスを誇る一役を担っているとさえ思える。

住宅街における植栽は、観賞用といった情緒的なことよりもまずは目隠し、つまりプライバシーを守る物理的な役割が先行しがちだ。住まいである以上、内側からも外側からも見えにくくすることが求められる。常緑樹でできた生垣は街の景観に緑を提供するし、綺麗に刈り込まれた植栽は管理の質を象徴しているように映る。ただ、残念ながら四季折々の変化を見せることは難しい。

手間いらずか、季節感の醸成か

シマトネリコ「プラウド南青山」

シマトネリコ「プラウド南青山」

マンションの場合、重要なのはあまり手がかからないことである。例えば、成長著しい木は剪定が大変だ。落葉樹は落ち葉拾いが面倒。一度で済めばまだいいがそうもいかない。実がなる木には鳥が来る。来るだけならまだしも、糞をすればこちらの手間がまた増える。

マンションの場合と申し上げたが、一戸建ても状況は同じである。しかし、一戸建ては責任の所在が明確。手入れをするのは自分しかいないから。では集合住宅はどうか。管理は管理組合が受け持つのだが、団体になったとたん物事はまずデメリットの解消に向かう。デベロッパーはそれを見越してできるだけ手間いらずの植栽を選んでしまうのではないだろうか。

目隠しになり、手入れもほぼ不要。それがひとつの答えだとして、異なる選択肢はないものか。季節感を醸成する木を植える例もあるにはある。シンボルツリーを据え置き楽しむこともまた然り。だが、この分野はまだまだ工夫の余地を残しているような気もする。手入れが億劫という足かせが外れてくれればという前提条件が付くが。

樹皮の色や樹形を楽しむ

ジューンベリーのつぼみ

ジューンベリーのつぼみ

目隠しに好適で手間の少ない木にシマトネリコがある。白っぽく、少しまだら模様のある樹皮が特徴だ。モダンな建物との相性も良いと言われている。大きなビルに添える場合は、ただまっすぐ大きく育てるのが正解かもしれないが、住宅なら株立ちが良いだろう。こまめに樹形を整えれば、幹がうねって雰囲気が出る。

株立ちとは、一本の幹を一本立ち、二またに分かれているのを二本立ちと呼ぶのに対し、三本以上の幹に分かれているものを指す。低い位置から緑の広がりが生まれ、雑木林のような自然な景観を醸し出せる。少し荒れた感じの庭にはぴったりだ。

落葉樹は家屋の南側に。夏は日射を遮り、寒い季節は建物の奥まで陽を招き入れるのが利点。初冬早くから葉を落とす木は、色付きを愛でる期間は短くなるも暖房効率を高めてくれるだろう。ヤマモミジのひと月ほど前に葉を落としてしまうジューンベリーなどはこれに該当するのだが、もうすでに今の時期(12月初旬)は来春咲かせる花のつぼみを枝先に蓄えている。この少し先行した感じがいい。流線形の枝ぶりも寒々しさを抑え、洋式の住宅には悪くないと思う。

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