ドイツ語と英語は「兄弟言語」
ドイツ語と英語の言語関係
ただしさらに学習を進めていくと、名詞の性、格による語尾変化等々、英語には存在しなかったりさほど問題ではなかったりする事項を次々と目にすることになるのですが……。
というわけで、類似点にせよ相違点にせよ、色々と気になる両言語の関係。ここでは特に「単語」のそれについてご案内します。
分かりやすい対応をする単語
ドイツ語には、英語の同義語とつづりも同じくする単語が存在します。April(アプリル)やCharakter(カラクター)、warm(ヴァルム)などです。もちろん発音や、名詞の頭文字を常に大文字にする、といった違いには気をつけましょう。そして全く同じでなくとも、つづりに対応を認めることができる語彙もあります。
童話でお馴染みグリム兄弟は実は大変重要な言語学者でもあり、そのお兄さんのほうが体系化した、ゲルマン語における「子音推移」の法則というものがあります。とりわけその影響の有無から、ドイツ語と英語の対応する単語で、上の例のように子音のズレに規則性を確認できるのです。ドイツ語のscharfと英語のsharpでのfとp、Kindとchildでのkとch、等ですね。
その他、母音を含むつづりにも、特にギリシア語やラテン語からの借用語で、対応関係が見られるものがあります。
"贈り物"のはずが"毒"に?「偽りの友」とは
ドイツ語にはfalscher Freund(ファルシャー フロイント/偽りの友)という表現があり、つづりや発音は一致ないし近似していながら意味が異なる外国語の単語を指します。日本語の「手紙」が、中国語では「トイレットペーパー」を意味する、というような例ですね。ドイツ語と英語にも、そうした偽りの友情? で結ばれた語彙が存在します。
Giftは独英ともに「与える(geben/give)」を基とする語ですが、「毒」と「贈り物」という意味の隔たりようが恐ろしいですね。両語に影響を与えたギリシア語でdosisという語が、「贈り物」と同時に「毒」をも含意していたことが元凶(?)のようです。
fastはドイツ語と英語で全く意味が異なるようですが、実は英語のfastが関係しているのは、ドイツ語のfest(フェスト/堅固な)のほうで、「しっかり(fest)走る」→「速く(fast)走る」の連想から。
こうして元を探ってみれば、現実の人間関係同様、偽りの友同士にも相互理解の手がかりがあろうというものです。
「バウムクーヘン」は「ビームケーキ」?
続いて、表現上対応しながらも、意味内容にズレが生じている語例を挙げましょう。両者を眺め比べてみれば、Herbst(秋)とharvest(収穫(期))など、意味上の相関にもなるほど! と思わせるものがあります。
とはいえ、「バウムクーヘン(Baumkuchen)」でお馴染みBaum(木)の親戚が、レーザービームのbeamである、というのは……?
探ってみれば、7~8世紀英国の神学者ベーダ(Bede)が、聖書にある夜間行進する民の照明として神が与えたという「火の柱」(出エジプト記13章21-22節他)の訳に、当時Baumの意であったbeamを用いたことに端を発するようです。
形態素の理解を深めよう
外国語の単語を借用する際、その意味をなぞって自国語に取り入れることを「翻訳借用」と呼びます。iron manに「鉄人」とあてるような事例です。
ドイツ語も英語もその歴史的背景から、ラテン語やフランス語より多くの語彙を借用しているのですが、表の例のように英語がそのままの形で借り入れているのに対し、ドイツ語のほうは翻訳借用を多く行っているところに特徴があります。
つまりexとaus、deとentといった、形態素レベルでの対応を解していれば、一見意味上の類似しか持たぬような語も、実は同じ発想に根ざしたもの同士だと判別できるわけです。
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