日独交流の発端は1861年、当時のプロイセンとの修好通商条約締結にあるとされています。以後、日本が同国を近代化の範としたこともあり、言葉においても政治や学術、文化やスポーツなど、様々な領域でドイツ語からの借用がなされてきました。

今回ご紹介したいのは、今日も日本語の一部として用いられている、そうしたドイツ語由来の言葉たち。皆さんはいくつご存じでしょうか。


ドイツ語は病院の隠語

我がドイツの医学薬学は世界一ィィィ!
とは某有名漫画キャラの台詞ですが、19~20世紀前半にかけ、ドイツ語圏の医学水準は実際、世界の頂点に君臨していました。そうした背景もあり日本語の医学系語彙も、大半はドイツ語からの借用となっています。


Medizin

クリックで画像拡大。ヒステリーの語源は子宮が病因と考えられたこと、ワクチンのは最初牛痘のものが用いられたことに拠ります


医学他自然科学系語彙はギリシア・ラテン由来の造語が多いのですが、日本語にはご覧のようにドイツ語の発音に近い形で取り入れられています。

ちなみに医者が診療結果を記入するカルテもドイツ語のKarte(カルテ)から。ただし、これは「カード」一般の意味で、日本語でいうカルテの意味にあたるのは、Krankenbericht(クランケンベリヒト)になります。

さらに医療従事者にとってドイツ語は単に実用性のみならず、患者に無用な情報を漏らさないための隠語の役割も果たしてきました。der/die Kranke(クランケ/病人)に由来するクランケessen(エッセン/食べる)から食事休憩のエッセンsterben(シュテルベン/死ぬ)からのステる、などは、そうした隠語の一部だとのこと。

また自然科学の術語について言えば、医学以外でも、Energie(エナギー)からエネルギーVektor(ヴェクトーア)からベクトル等、やはり先進国の言語であったドイツ語からの借用語が数多く用いられています。

「内ゲバ」のゲバって?

続いては、政治・経済関係の借用語を。

Politik

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「反対命題」を意味するアンチテーゼはヘーゲル、「賃金労働者階級」を意味するプロレタリアートはマルクスとエンゲルスという、ドイツの思想家由来の術語ですね。

「暴力」を意味するゲバルトは元々学生運動の隠語ですが、むしろ「内ゲバ」「ゲバ棒」といった用法で馴染みがあるかと思います。

もう一つ、ニュースで折々目にするのが、スローガン等を唱和するシュプレヒコールSprechchor)。一見して明らかなように、sprechen(シュプレッヒェン/意見を言う)とChor(コーア/合唱)の合成から成る、ドイツ語由来の表現です。

クーヘンもワーゲンもドイツ語由来

その他、スキーに登山、音楽に料理、自動車にペットと、様々な場面でドイツ語由来の単語が登場します。

Lehnwoerter

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親しみある名称の数々ですが、元の意味から逸れた語もあるのでご注意を。

Wiener

ドイツでウィンナー(Wiener)、オーストリアでフランクフルト(Frankfurter)といえば、茹でソーセージ

例えば一般に「バイト」と簡略化されて用いられている、アルバイト。ドイツ語のほうのArbeitは仕事一般、研究や制作、そこから生まれた作品等を指します。学業も含むので、「学生の本分はArbeit!」なら教授の文句も出ないでしょう。
一方、日本語のアルバイトに該当するドイツ語は、英語由来のJob(ジョプ)になります。

またウィンナーといえば、日本では子供から大人まで、たいへん人気なおかず。たこさんウィンナー炒めなんて、おつまみにもぴったりですね。
が、ドイツの屋台でウィンナーソーセージ(Wiener Würstchen/ヴィーナー ヴュルストヒェン)を注文すれば、出てくるのは「茹でた」腸詰。つまりそちらでは「ウィーン風(Wiener)」とは、素材の種別よりもむしろ調理法を指す表現というわけです。



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