茶文化を肌で感じる
京都栂尾には、日本最古の茶園があります。喫茶養生記の著者である栄西が宋から持ち帰ったチャの種を高山寺の明恵上人に贈ったことから、それをきっかけに宇治にも広まり、栂尾で作られた本茶、宇治の宇治茶が今でも愛されています。このような茶文化の根付いた京都という場所に足に踏み入れるだけでも、茶文化を肌で感じる機会がぐっと多くなります。京都の街を歩いていると、普段はコーヒーなのにお茶が飲みたくなったり、お寺で抹茶をいただいてみたりした経験のある方も多いはず。誰かに勧められたわけでもないのに、自然に飲んでみたくなる、そんな雰囲気がここにはあります。
吉田山大茶会のパンフレットには、名茶はかく語りき「どうぞ、わたしをお飲みください」とあります。それぞれのブースをのぞいてみると、人を集めているのは、人ではなくお茶なのです。丁寧ながらも過度の説明や試飲したら買わなければいけないような雰囲気のあるお店とは一線を画しています。立ち寄った人が試飲して、自然に言葉がもれるように感想を口にし、出展者が一言二言、言葉を添えるだけで通じるものがあるのです。
老舗のお店を何十件も回り歩くよりも、ずっと素直な出会い方ができるのもこのイベントの良さのひとつ。喧騒から離れ、自然を感じながら石段を登った神社の境内という場所もまた、来場者の心から余分なものを洗い流してナチュラルな状態でお茶と向き合わせてくれるのかもしれません。
経歴を知って人にたどりつくのか、人を知って経歴にたどりつくのか。お茶にも同じことが当てはまります。ここに集まる人々は、自分が素直においしいと思ったお茶を手にして、それから詳細を知っていきます。人の肩書やお茶のブランド力、そういうものをすべて排除し、お茶のちからが茶文化をひろめている場所です。