「マンションのコンセプト」とは?
コンセプトとは、物事の意味・概念である。マンションは建築物の一種であるから「モノ」のひとつとして数えることができるし、またそこでは人が暮らすことから「コト」として捉えることも可能である。生活の基盤だから、奇をてらったコンセプトは無用だが、その有無または明瞭さが住まいとしての評価を二分する。「マンションのコンセプト」と聞いて、皆さんは何を想像されるだろうか。チラシのキャッチコピー、高級感、あるいは暮らしやすさ。すべてを総括した意味合いで用いるケースが多いのだろうが、マンションでもコンセプトの設定は大変重要であることあらためて強調しておこう。それは個性を表現しにくい集合住宅ならではの事情でもあるだろう。
分譲マンションの場合、コンセプトの核となるのは立地である。ロケーション(位置関係や利便性)、現地周辺の環境、イメージ、建築上の制限など様々な要素が重なり合って、まず立地の個性をあぶり出す。次に、それを引き立たせるためにどんな空間設計が施されているのか、そんな観点で見極めていくと良い。
都心の第一種低層住居専用地域
12ある用途地域のなかで最も建築制限の厳しい地域が「第一種低層住居専用地域」(以後、「一低(いってい)」と略す)。建物の高さや敷地に対する大きさなどが抑えられ、街並みは一軒家を中心に構成されている場合が多い。大きな邸宅が集まれば緑地も広がり、自然豊かな景観を持続させることができる。それが規制のねらい。したがってマンションプロジェクトの難易度は自ずと高くなる。だが、デベロッパーは根強い人気の低層マンションを実績化することで、市場から高い評価を得、ブランドを構築したいのである。
つまり低層マンションは、本来その地域が持つ魅力に加え、手掛けるデベロッパーは存分に緊張感を味わいながら力量を発揮するという運命に、そもそもあるのだ。厳しい条件のなかで、どんなコンセプトを打ち立て形にするか。それは住み手に相通じるものであり、さらにいえばその後リフォームを請け負う設計者にも降りかかるプレッシャーだといっても過言ではないだろう。