高級マンションのキッチン

最近のモデルルームでは、吊り戸棚のないキッチンが主流。「開放感がある、と顧客に好評」(デベロッパー担当者)だそうだ。たしかに、カウンターキッチンのシンク上の収納棚を取り外せば、リビングダイニングが見渡せるばかりか、バルコニーの先にある景色も視界に入ってさぞ快適だろう。その分の収納は、背面のスペースなどで代用させるという。
「ザ・パークハウス元麻布」モデルルーム

「ザ・パークハウス元麻布」モデルルーム


キッチンは、とくに女性がじっくり時間をかけてみるところ。決断を左右するといっても過言ではない。だからこそ、売主はつねに改良を心がけているのだが、さて、この「開放的なキッチン」は果たして市場に根付くのだろうか。

そもそも高級マンションのキッチンには二通りの考え方がある。リビングダイニングと水回りを完全に切り離した「クローズド型」とホームパーティに便利な「オープン型」である。前者をコンサバティブと位置付けるなら、設備やデザインの進歩、ライフスタイルの変化から、現在では後者が主流。そのように考えれば、吊り戸棚を取り払う開放的なキッチンは、一見時流に合っているようにも思える。が、このタイプは注意が必要である。3つほど要点をまとめてみよう。

「見えやすい」は「見られやすい」と同じ

まずひとつは、「見られやすいこと」。冒頭、吊り戸棚をなくしては開放感を高めると説明したが、上部だけではない。手元を隠す天板からの立ちあがり(キッチンとダイニングとの壁)さえもなくし、完全なフラットにするケースも増えた。この場合、調理の状況やシンクの中の状態は、どこからも丸見えだと覚悟した方がいい。当たり前のことだが「見えやすい」は「見られやすい」のである。
「六本木ヒルズレジデンス」のキッチン(一例)

「六本木ヒルズレジデンス」のキッチン(一例)

例えば、お客さんを招く。「明るくて開放的なキッチンでいいですね」と言ってもらえるかもしれない。しかし、その後のこともイメージしてほしい。コーヒーをたてる、冷蔵庫からお茶を出す、棚から茶菓子を取る、一連の作業はすべて見られていると思った方がいいだろう。棚や冷蔵庫のなかまで視界に入ってしまうことだって考えられる。テーブルに近いシンクには洗剤やスポンジも入れてある。キッチンには「あまり見られたくないもの」も多いのだ。