フィンランド/ヘルシンキの観光・お土産

ヘルシンキの記念碑・彫刻アート探訪〈シンボル編〉(2ページ目)

ヘルシンキ市街を歩いていると、至るところで気になる彫刻作品やモニュメントが設置されているのに目がいくのではと思います。屋外作品が進んで作られるようになったのは1800年代後半からで、現在では市立美術館が把握するだけでも400作品を超えているといいます。前回の〈偉人編〉に続き今回は、待ち合わせ場所としてもよく使われる〈シンボル編〉。街のランドマーク的存在のアート作品を一挙紹介します!

こばやし あやな

執筆者:こばやし あやな

フィンランドガイド


ヘルシンキ港のシンボル的存在、バルト海の乙女が立つ噴水広場

アマンダ像

港を振り返る優美な姿が印象的な、通称「バルト海の乙女」。モデルとなったのは、フランスにアトリエを構えていた作者が見出した10代のパリジェンヌだった

エテラ港エスプラナディ通りの狭間にある噴水広場は、1900年代はじめにヨーロッパらしい街並み整備を促進するプロジェクトの一環として建設が進められました。この噴水の中心に立つ「バルト海の乙女」の愛称で有名な銅像が、 当時パリで活躍していたフィンランド人彫刻家のヴィッレ・ヴァルグレン(Ville Vallgren/1855-1940)の作品であるハヴィス・アマンダ(Havis Amanda/Haaviston Manta)です。

恍惚と肩越しに港方面を振り返る裸体の女性のモデルになったと言われているのは、ヴァルグレンが製作所を構えていたパリで出会った19歳のパリジェンヌ、マルクレール嬢とレオニー・タヴィエ嬢。銅像はもともとパリのアートサロンで公開されたもので、好評を博します。そしてその翌年に、ヘルシンキ市がぜひこの作品を噴水広場のメインモニュメントにと誘致し、1908年にヘルシンキにてお披露目されたのでした。のちにヴァルグレン自身が「海から湧きあがるような女性像はヘルシンキ市の象徴でもある」と語ったことから、今日ではすっかり、海辺に発展する爽やかな街のシンボル的存在として定着しています。

ヴァップ

毎年巨大な装置を稼働させてまで大々的に行われるアマンダ像の洗浄と着帽の儀式は見もの

ところで今日このアマンダ像が1年で1番注目をあつめる日こそが、こちらの記事でも紹介したヴァップ(メーデー)の前夜祭です。ヘルシンキ中の学生たちが4月30日の夕方に像の周りに集い、その年の代表生徒が像をモップで洗って学生帽を被せる……という儀式が、2日に渡るフィンランド流ヴァップの開始の合図となるのです。運良くこの日にヘルシンキを訪れることになったら、ぜひ夕方にアマンダ像のそびえる噴水広場まで駆けつけてみてください!

■設置場所:エスプラナディ公園(Esplanadin puisto)東端すぐ
■アクセス:ヘルシンキ中央駅から南東方面へ徒歩約10分


繁華街での待ち合わせスポットに、百貨店前の鍛冶屋の男たち

鍛冶屋の男たち

繁華街の中心であるストックマン百貨店の前に位置することから、待ち合わせ場所としてもよく使われる銅像だ

買い物通りアレクサンドル通り(Aleksanterinkatu)の西端、ストックマン百貨店前にそびえ立つ3人の男たちの銅像は、「Kolme seppää(3人の鍛冶屋)」と名がついた、待ち合わせ場所としても有名な スポット。

この銅像作品はもともと、C.エンゲルの記念レリーフの製作者でもあるフェリックス・ニュルンド(Felix Nylund/1878-1940)が、1910年代に哲学者ユーハン・ヴィルヘイム・スネルマンの記念碑の設計競技に勝利し、そこに捧げる予定だった作品でした。ところが、あまりにスケールが大きかったため結局実現せず、後に現在の場所に建造されることになった作品に案が流用されたといいます。完成作品がこの場所にお目見えしたのは1932年のことでした。

3人の鍛冶屋というユニークなモチーフは、人々の労働と強調の象徴と語られています。それぞれの人物には、ニュルンドとの親交関係から抜擢された複数のモデルがいるようで、ハンマーを振り上げる男のスケッチには若かりし頃のニュルンド自身のイメージが投影されたとか。ラテン語で碑文の彫られた土台の花崗岩には、1944年の2月にヘルシンキが大空襲に見舞われた際の弾痕が今でも残っています。

■設置場所:ストックマン百貨店(Stockmann)北側
■アクセス:ヘルシンキ中央駅から南方向に徒歩約5分


次ページでは、民族叙事詩『カレヴァラ』をテーマにした作品たちを一挙紹介!
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