フィンランド/ヘルシンキの観光・お土産

ヘルシンキの記念碑・彫刻アート探訪〈偉人編〉

ヘルシンキ市街を歩いていると、至るところで気になる彫刻作品やモニュメントが設置されているのに目がいくのではと思います。屋外作品が進んで作られるようになったのは1800年代後半からで、現在では市立美術館が把握するだけでも400作品を超えていると言います。今回はその中から、かつて政治・文芸・芸術・スポーツ分野でフィンランドで活躍した偉人たちの記念碑にあたる作品を10点、各人の業績とともにご紹介します。

こばやし あやな

執筆者:こばやし あやな

フィンランドガイド

記念碑がつくられるほど市民の支持を得た、ロシア皇帝アレクサンドル2世

アレクサンドル2世

他国の統治者とはいえ良識ある皇帝だったからこそ、街で一番大きい広場である元老院広場の中央にそびえ立つアレクサンドル2世

観光客が必ず立ち寄るヘルシンキ大聖堂前の元老院広場のど真ん中に、 ロシアがフィンランドを統治していた時代の皇帝のひとり、アレクサンドル2世(Aleksanteri 2./在位期間1855−1881)の豪壮な記念碑がそびえ立っています。なぜフィンランドを苦しめたはずのロシア皇帝がこのように大々的に称えられているのか、不思議に思う人も多いでしょう。

実はフィンランドを支配下に置いた歴代ロシア皇帝の中でも、とりわけアレクサンドル2世は聡明・寛大な君主で、フィンランド市民の声にも耳を傾け、フィンランド語を行政上の公用語として認めるなど最大限に自由を重んじました。そのおかげで、フィンランド人はこの時期に精神的余裕を保ちながら、着実に民族意識を育む事ができたとも言います。しかし善政に尽くしたアレクサンドル2世は1881年にサンクトペテルブルグで暗殺されてしまい、その後は息子アレクサンドル3世による打って変わっての專制政治に国民が苦しめられてゆくのでした。

アレクサンドル2世の突然の死後、フィンランド人の民族意識を啓発してくれた皇帝への、感謝と敬意を込めた記念碑の設計競技が企画されると、当時国内で活躍していたほぼすべての彫刻家たちが一斉に名乗りをあげたと言います。結果、代表作の多くが今も国立美術館に収蔵されている高名彫刻家のヨハンネス・タカネンがその権利を勝ち取り、次点であったワルター・ルーネベリが補佐として協力するかたちで、1894年に現在の場所に見事な記念像が完成しました。

■設置場所:ヘルシンキ大聖堂前の元老院広場(Senaatintori)中央
■アクセス:ヘルシンキ中央駅から東方向に徒歩約5分


愛馬に乗って中心街を見渡す、マンネルヘイム元帥の銅像

マンネルヘイム像

マンネルヘイム像のすぐ背景には、国会議事堂や新音楽センターなど街の要所が建ち並んでいる

こちらの記事でも紹介したように、 ヘルシンキ中心街を南北に貫く目抜き通りの名前がマンネルヘイム通り(Mannerheimintie)。その中心交差点でもある現代美術館キアズマ前の小広場には、国内外で戦乱の続いた20世紀にフィンランド軍の最高指揮官として数々の戦争を指揮し、一時期大統領にも就任したカール・グスタフ・エミール・マンネルヘイム(Carl Gustaf Emile Mannerheim/1867-1951)の功績をたたえた乗馬像が、高みから中心街を見渡しています。 

マンネルヘイム元帥が名声をあげたのは、独立直後の1918年に勃発した、混乱する国内の政治的対立による内戦のとき。ロシアの支援を受けた左派(赤衛軍)の過激なクーデターによって、政府が一時期ヘルシンキを逃れる事態になりましたが、マンネルヘイム率いる政府軍(白衛軍)の反撃により、赤衛軍の駆逐に成功したのでした。その後も、ソ連との2度にわたる戦争で指揮を執ってフィンランド防衛に死力を尽くしたことから、20世紀フィンランドの英雄のひとりとして今日まで崇められるようになったのです。

彼の記念像建造の話は存命中の1930年代からあがっていましたが、実現に向けて動き始めたのは、世界大戦の戦乱を経た1950年代のことでした。設計競技で選ばれたのはアイモ・トゥキアイネンという彫刻家で、完成作品は石壇も含めると高さ11.7メートルにもなります。乗馬姿が象られているのは、マンネルヘイムが馬に強いこだわりがあり、自身で名馬を育てていたというエピソードが背景にあるようです。

■設置場所:現代美術館キアズマ(Nykytaiteen museo Kiasma)
■アクセス:ヘルシンキ中央駅から西に徒歩約3分


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では、ヘルシンキの街おこしと都市設計に携わった功労者たちの記念碑を紹介!

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