ストレス/人間関係・人付き合いのストレス

体罰教育、体罰育児はなぜいけないか?(2ページ目)

最近、学校、スポーツの場での「体罰」事件がたびたび報道されています。今、どうして体罰が問題になっているのでしょう? また、体罰を受けて育った人はどう感じ、どんな影響を受けるのでしょう?

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

ジャイアンはなぜ仲間に暴力をふるうのか?

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暴力をふるう子の背景にある「親のしつけ」

『ドラえもん』に登場するガキ大将のジャイアンは、親の体罰をモデリングした好例です。ジャイアンは、近所の子どもたちに言うことを聞かせたいときに、すぐに暴力を使います。のび太を殴って漫画本を取り上げたり、スネ夫を殴って下手な歌を無理やり聴かせようとします。ちなみに、ジャイアンは、クラスの優等生で弁の立つ出来杉くんには暴力をふるいません。殴って言うことを聞かせられる相手を、ちゃんと選んでいるのです。

ジャイアンの暴力のルーツは、お母さんのしつけにあります。お母さんは、息子が店番をさぼったり、周りの子をいじめたりすると、暴力を使って折檻します。ジャイアンは、母親に叩かれると、震え上がってすぐにその行動をやめます。「弱い者に言うことを聞かせるには、結局は体罰がいちばん」という効果を、身を持って知っているのです。

暴力をモデリングした「パワハラ」上司たち

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パワハラは「精神的暴力」で部下を追い込む

体罰のモデリングは、子どもに限ったことではありません。思春期の若者や成人も、教師や上司が体罰を使っていると、「指導は結局、暴力がいちばん効く」と覚えてしまいます。これを職場に応用したのが「パワハラ」です。

パワハラを行う教師や上司には、その生育過程、成長過程に何らかの暴力が関わっている可能性があります。自分自身が親に叩かれて育ってきた。教師が生徒を怒鳴って指導する場面を見てきた。上司が、暴言を吐きながら部下たちを従わせ、優越感を楽しむのを見てきた。こんな経験をモデリングすると、「指導は結局、暴力がいちばん効く」「偉くなったら、暴力で優越感を楽しめる」と覚えてしまうことが少なくありません。

社会人になると、さすがに身体的暴力を使った指導をしていると、立場的に不利になることが多いため、パワハラは巧妙な手口で行われます。怒鳴りつけて驚かせたり、机を叩いて威圧したり、ひどく傷つけることを言ったりする精神的暴力が、パワハラの常套手段になります。こうした精神的暴力なら証拠が残りにくく、「イライラしてつい机を叩いただけ」「口が悪いだけ」などと言い逃れをしやすいのです。とはいえ、言い訳はどうあれ、もちろんこうした精神的な暴力も、典型的なパワハラと判断されます。

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