体罰でつぶれる子は「実力のない子」なの?

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刺激に耐えられずその場を離れていく人は「脱落者」ではない

大阪市の高校生が部活顧問の体罰を苦にして自殺した事件、柔道全日本女子代表監督による選手への体罰事件など、このところ「体罰」の事件が目立っています。

一昔前には、運動部の活動を中心に、体罰指導はよく見られる光景でした。「しごきに耐えられなければ、厳しい戦いを勝ち抜けられない」と信じている人が多かったのです。実際、80年代、人気漫画『タッチ』を愛読者していた私も、鬼コーチのしごきに耐えて甲子園出場を勝ち取った高校球児たちの青春物語に、胸を熱くしたのを覚えています。

しかし、実際には、体罰の指導効果は根拠に乏しく、体罰を苦にしてつぶれていく人、体罰への恐怖から萎縮して実力を伸ばせない人も多いものです。体罰指導についていけない人は「脱落者」と呼ばれ、切り捨てられてきましたが、そうなったのは、その人が「弱い」からではなく、暴力によって伸びる芽を摘まれ、伸ばせるはずの実力を発揮する機会を持てなかった面の方が大きいのではないかと感じています。

子どもは大人の行動を「モデリング」する

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叩かれて育った子どもは何を学ぶ?

体罰は部活動に限らず、子育てをする家庭の中でも見られる光景です。私が子どもの頃には、「子どもは叩いて育てるもの」という哲学を持つ大人がたくさんいました。そうした大人は、「子どもは理屈で言っても分からないから、『いけないこと』は、叩かれた痛みを通じて学ばせるのがいちばんだ」と主張していました。

しかし、このような「叩いて育てる」子育てを許した結果、暴力を正当化した親が虐待をしてしまうケースも少なくありません。実際、虐待をした親の多くが「しつけのつもりだった」と言います。さらに怖いのは、体罰を受けた子、体罰を目の当たりにしてきた育った子が、「言うことを聞かせるには、結局は暴力がいちばん効果的だ」と学んでしまうことです。

アメリカの心理学者 バンデューラは、子どもは周りの人を観察し、その行動を模倣しながら成長していくと言いました。これを「モデリング」と言います。「親の背を見て子は育つ」と言われるように、子どもはいちばん身近にいる親の行動を観察し、その行動を模倣して、生き方を学んでいきます。つまり、言うことを効かない子どもを親が叩いてしつけていると、「言うことを聞かせるには、結局は暴力がいちばん効果的だ」とモデリングしていきます。