億ションと広さの関係
2012年、首都圏で(いや、おそらく日本中において)分譲された新築マンションの最高額住戸は、「パークコート赤坂ザタワー」の10億円である*。専有面積は、218.00平米。坪単価に換算すれば@1,516.4万円である。一方、昨年竣工し注目を集めた高級マンション「アークヒルズ仙石山レジデンス」が先週末(2月23日・24日)第2期分譲を行っている。販売戸数は10戸。最高額住戸は、8億2,000万円(309.44平米)。同じく坪単価にして、@876.0万円となった。
それぞれの分譲価格(坪単価)は、階数や向き、眺望、仕様設備など(また厳密にいえば築年数も複雑に絡まりあって)一概には比較できないため、それに対するコメントは避けたいが、普及帯と明らかに異なるのは、その広さ。本格的な億ションの場合、自宅用に供する物ならば、その面積は200平米程度は確保したい。したがって、グロス価格は大きくならざるを得ない。
*不動産経済研究所調べ
タワーマンションとセカンドニーズの相性
とはいえ、タワーマンションともなれば、どうしてもそれに満たない区画が生じる。眺望に劣る低層部や間口に制限のある中住戸など。市場ボリュームの観点でも、広い部屋を作りすぎると在庫が長期化するリスクも負う。そもそも数億円ものマンションを買える人が、市場で潤沢に存在しないからだ。かといって、狭い間取りを用意すると問題が解決するというものではない。たとえば、坪単価@600万円の建物に、50平米の部屋を設けるとどうなるか。価格は9,000万円強と、たしかに1億円は下回る。が、逆にひとり世帯向きの大きさのマンションにそれだけのお金を払う人がどれだけいるだろう。投資用としても割に合わない。
しかしながら、タワーマンションならではの、ホスピタリティの高さや共用施設の充実ぶりが、自宅用でもなく投資用でもない新たな需要が掘り起こしている。それが、セカンドニーズ。具体的には、ホテル代わり(東京出張の際の宿泊所)、書斎、役員会議用(あるいは研修会や接待)、極端な例では倉庫(クローゼット)として所有する例もあるようだ。これらの場合、求められる面積は、あえていうなら100~200平米くらいが妥当なところだろうか。
そして、このようなケースにおいて、インテリアは一味違ったものとなる。
N.YのSOHOのように
一例を挙げてみよう。上および下の画像は、六本木ヒルズレジデンスをビジネスの拠点として所有したオーナーが、ニューヨークのSOHOをイメージしてリフォームした画像である。折り上げ天井をあえて埋め、すっきりとした空間にアイアン(鉄材)を多用し、クールなイメージを演出している。上質な家具とアートを組み合わせることで空間の統一感を持たせた。趣味の楽器をディスプレイできるオーダー収納を作り込む一方で、キッチンを含む水回りはあえて視界からは除いた。商談と書斎に徹した空間はあくまでストイックな印象である。
前回、築浅高級マンションをリフォームする理由でもご紹介したが、今後こうしたケースは市場で増えると予想できる。理由は3点。まず1点が、しっかりと広さの取れた高級マンションが上記六本木ヒルズレジデンスを代表するように、2000年前半の時期に集中しており、それ以後あまり供給がなく、この年代の物件が富裕層の対象になり続けること。2点目に、新築時は万人受けを狙った内装となるため、自分好みのインテリアはリフォームするしかないこと。そして最後に株価の上昇である。今年に入って、良質な高級マンションは少しずつ動きが良くなっている。次回は、同じく六本木ヒルズレジデンスのリフォーム事例をご紹介する。
【関連記事】
ニューヨークの超高級マンションリノベーション
【フェイスブック】
高級マンション
Copyright(C)2006 MH3 Inc. All rights reserved.