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名建築を纏う、前代未聞のマンションプロジェクト

従前の建物を一部残し、新しく建てた躯体との合体を試みる。そんなにわかに信じ難いプロジェクトが現在進行中だ。辰野金吾原設計、國枝博が改修した名建築は曳き家工法(鹿島建設)で蘇る。「グランサンクタス淀屋橋」(オリックス不動産)を取材した。

坂根 康裕

執筆者:坂根 康裕

高級マンションガイド

 

栄華を極めた地

淀屋橋

淀屋橋

皇居を同心に、道路(1号~8号線)と鉄道(山手線)の環(わ)を重ね広げ、都市形成を成したのが東京であるなら、巨大な一本の道「御堂筋」を軸に展開したのが大阪である。

1937年に開通した御堂筋は、キタ<梅田>とミナミ<難波>を結ぶ、およそ4キロの縦断道路。片側6車線、その幅は44mにも及ぶ。市民から「飛行場でもつくるのか」と揶揄された構想は、100年先を見据えた当時の市長、関一(せきはじめ)氏が提唱。地盤の弱い土地の地下鉄敷設を併行した工事は困難を極めたという(国土交通省近畿地方整備局HPより)。

今回の舞台は、地下鉄御堂筋線「梅田」駅からひと駅南へ行った「淀屋橋」である。地上にあがると、淀屋橋の向こう(中之島)は日本銀行大阪支店、その正面には大阪市役所がそびえる。経済の中心地、なかでも金融業の繁栄した土地柄が一目瞭然といえよう。

名建築の残る街

日本銀行大阪支店

日本銀行大阪支店

日本銀行大阪支店は、昨年改築が完了した「JR東京駅舎」を手掛けた辰野金吾氏設計である。東京都中央区日本橋にある本店と同様の景観をみせることが右の画像でおわかりいただけるだろう。

現在、大阪は大阪駅(梅田)の北側「うめきた」を代表する再開発案件が数多く進行中である。大型店舗なども活発で、関西を代表する老舗「阪急百貨店」の大掛かりなリニューアルも完成。東京一極集中、横浜にさえ押され気味だったかつての活気を取り戻さんとする勢いに見える。

デパートの正面玄関を入った時の印象や地下鉄のアール状の屋根を眺めていると、空間の風格といったものは大阪のそれが他より優れているのではと思う瞬間が少なくないことに気付く。これは商売の原点なのか、永く良いものは結局経済的であるということなのか。大阪の、時代を貫く建築物の特色の一つといえそうだ。
三休橋筋。レンガの建物がオペラドメーヌ高麗橋

三休橋筋。レンガの建物がオペラドメーヌ高麗橋


さて淀屋橋には、そんな特徴を集約したかのような、名建築の点在する通りがある。御堂筋のすぐ東を併行する道路、「三休橋筋」。現在は整備も着々と進み、電線は埋設化され、ガス灯も復活する予定だという。道沿いには、1912年築「オペラドメーヌ高麗橋」(辰野金吾設計)など、ヴィンテージなビルディングがあちこちに残されている。「グランサンクタス淀屋橋」もこの通りの、それらに名を連ねる一棟であった。

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