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イタリアチーズの王様 パルミジャーノ・レッジャーノの食べ方・保存方法

パルミジャーノ・レッジャーノは、そのまま食べるのはもちろん、パスタやリゾット、サラダやスープにたっぷり使うとお料理が格段に美味しくなる万能チーズ。塊を冷蔵庫に常備しておくと便利ですよ。チーズの伝統的な製法から美味しい食べ方、保存方法までご紹介します。

小笠原 由貴

執筆者:小笠原 由貴

チーズガイド

チーズの王様「パルミジャーノ・レッジャーノ」。「パルメザン」との違いは?

イタリア北部のポー川とアペニン山脈の間で、ベネディクト修道院によって13世紀頃にはすでに生産されていたという記録が残る、「パルミジャーノ・レッジャーノ」。実は800年ほども前から今とほとんど変わらない方法で製造され、“チーズの王様”と讃えられています。
パルミジャーノ・レッジャーノの製法と食べ方

パルミジャーノ・レッジャーノ。1個の重さは40キロほどもある。

パルミジャーノ・レッジャーノは、イタリア北部で手作りされている最高品質のチーズで、P.D.O.と呼ばれる原産地名称保護(Protected Designation of Origin)制度により、品質・製法・製造場所等が厳格に守られています。

ちなみに「パルメザン」というのは、本来はパルミジャーノの英語またはフランス語読みで、ヨーロッパではパルミジャーノ・レッジャーノの事を指します。また「パルメザン」という名前で親しまれている粉チーズもありますが、これは“パルミジャーノ・レッジャーノ風の粉チーズ”としてアメリカで製造、商品化されたもの。本物の「パルミジャーノ・レッジャーノ」とは別物です。ここでは、イタリアの伝統的なチーズ「パルミジャーノ・レッジャーノ」についてご紹介しましょう。
   

パルミジャーノ・レッジャーノってどんなチーズ?

  • タイプ:ハードタイプ
  • 原産地:イタリアのパルマ、レッジョ-エミリア、モデナ、マントヴァのレノ川左岸、ボローニャのポー川右岸
  • 原料乳:牛乳(部分脱脂したもの)
  • 大きさ・形:直径35~45cm、高さ約18~24cm、重さ24kg以上(現在は40kg位の物が多い)
  • 熟成期間:最低12か月
  • 固形分中脂肪分:最低32%
  • 旬:1年中
  • D.O.C. (原産地統制名称) 取得:1955年 
    (その後、EUレベルの認証の制定に伴い、1996年に DOP / PDO (原産地名称保護)取得 )
水分が少なく、超硬質なパルミジャーノ・レッジャーノ。割ると内部はもろもろとした粒状に砕ける組織で、やや黄色味を帯びています。熟成が長いチーズなので熟成中にたんぱく質が分解されてできたアミノ酸が結晶化し、直径1~5mm程度の白い斑点となってあちらこちらに現れます。知らないと、この斑点はカビか何かだと思われそうですが、実は熟成の長さの証。噛んだ時の、しゃりっとした食感も心地よいアクセントです。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

熟成期間の違うパルミジャーノ・レッジャーノ。最も熟成の長い手前の48ヶ月のものは、アミノ酸の結晶が特に目立つ。


パルミジャーノ・レッジャーノは、おろして料理に使う事が多いかもしれませんが、塊を割ってそのままいただくのも格別です。また、香りがとても華やかなチーズなので、出来る限りおろしたて、切りたてを使う事をおすすめします。
パルミジャーノundefinedレッジャーノundefinedチーズundefinedカットundefinedカッティングショー

パルミジャーノ・レッジャーノの丸ごと1個のカッティングショーにて。大きなチーズを3種のナイフのみで割っていく。割れた瞬間、良い香りがパッと広がる。断面にはアミノ酸の結晶も見える。

なお、1kgのパルミジャーノ・レッジャーノを作るのに必要なミルクは16リットル!  ミルクの旨味と栄養が、ぎゅ~っと凝縮されたチーズです。

 

製法(原料乳から製造、熟成まで)

現在のパルミジャーノ・レッジャーノに繋がるチーズが初めて文献に登場するのは13世紀。修道士達によって製造され、製法が確立されていきました。そしてその当時から基本的には同じ場所、同じ材料、同じ製法で伝統が受け継がれているチーズです。そんな歴史あるチーズの原料、そして製法についてご案内しましょう。

◆原料は新鮮な生乳、塩、凝乳酵素のみ
パルミジャーノ・レッジャーノの原料は、生乳、塩、子牛の胃袋から抽出された天然の凝乳酵素のみと極めてシンプル。添加物や保存料は一切使われていません。
そして最も重要な原料の生乳は、限定生産地域からのもののみ、と決められています。さらに牛たちが食べている飼料もその地域内のもと限定され、サイロ貯蔵等の発酵したものは一切禁止と厳格に規定されています。だから牛たちは、その土地ならではの気候風土を反映した風味豊かなミルクを出してくれます。そうして絞られたミルクは一切加工される事なく、1日2回の搾乳から2時間以内にチーズ製造所へと届けられます。

ちなみに牛の種類は「フリゾーナ」と呼ばれるホルスタイン種が現在の主流ですが、もともとレッジョ・エミリア地方の伝統牛であった「ヴァッケ・ロッセ(赤牛。レッジャーナ種とも)」やパルマ地方に多い「ブルーナ種」、モデナ地方の伝統牛「ヴァッケ・ビアンケ(白牛。モデネーゼとも)」等も徐々にその数を増やしています。
パルミジャーノレッジャーノ、チーズ、牛

お食事中のフリゾーナ種(ホルスタイン)の牛たち

パルミジャーノ・レッジャーノ、赤牛、ヴァッケ・ロッセ

ヴァッケ・ロッセと呼ばれる赤牛。パルミジャーノ・レッジャーノは、もともとこの牛のミルクで作られていたにもかかわらず一時は激減していたが、赤牛協会の設立等にもより頭数は随分と回復した。



◆中世からほぼ変わらない製造方法
前日の夕方と当日朝の1日2回、チーズ製造所に届けられたミルクは、職人たちにより伝統的製法でチーズへと変化していきます。ちなみにチーズの製造は1日1回のみと規定。その製造方法は以下の通りです。

まず、夕方届いたミルクを大きなバットに入れて一晩静置。翌朝表面に浮いてきた乳脂肪を取り除き(取り除いた乳脂肪はバター等に加工)、その脱脂された乳と当日朝に届いた新鮮な全乳を大きな銅鍋に注ぎ入れて合わせます。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ、銅鍋

銅鍋にミルクを入れる。鍋は乳が約1100Lも入り、深さ約2mもある大きなもの。上のバケツには前日のホエーがスタンバイ。


銅鍋に前日のホエー(乳清)も加えてミルクを温めます。温まったところでさらにレンネット(凝乳酵素)を混ぜ込むと、10分程でふるふるのゆるいゼリー状に凝固するので、それをスピーノと呼ばれる道具で米粒大になるまで細かくカットします。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

スピーノを使って固まったミルクを米粒大まで細かくカット。


その後、攪拌しながら約55℃にまで温めると水分が抜けて粒が締まってくるので、その粒の状態をチェック。ちょうど良い状態であれば暫く静置して固形分を鍋の底に沈殿させます。
チーズ、パルミジャーノ・レッジャーノ

攪拌しながら加熱すると、徐々に粒が締まって水分と固形分とに分かれてくる


沈殿したカードの塊を大きな木べらで持ち上げて麻布ですくい取ります。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

底で固まったカードを大きな木べらで持ち上げ、麻布ですくい取る。


カードの塊を半分にカットしてそれぞれを麻布で包んで吊るします。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

カードの塊を「カザーロ」が2つにカット。ちなみにカザーロとはチーズ職人の親方の様な存在。
 

パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

二つに分けたカードを麻布で包んで吊るしてしばらく水切り。
 

少し水が切れたら麻布ごと型枠に入れて重石を乗せ、水分を抜きます。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

型枠に入れて重しを乗せ、半日ほど水を切ります。


当日夜のチーズがまだ柔らかいうちにステンレスの型枠に移し、「PARMIGIANO-REGGIANO」の点文字ベルトを型の内側に入れて枠を締め、反転しながら2~3日置いて成形します。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

ステンレスの型の内側に点文字ベルトを入れ、チーズの表面に「PARMIGIANO-REGGIANO」の点文字を入れる。

チーズを型から取り出して飽和塩水に20日程浸け、塩分を浸透させます。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

飽和塩水のプールに20日間ほど浸けて加塩。


こうして加塩されたチーズは、いよいよ熟成工程へ。
熟成庫の棚の上で、反転、ブラッシングを繰り返しながら、最低12か月、通常24ヶ月、そしてそれ以上を過ごすうちに表皮が自然に出来上がり、同時にタンパク質がアミノ酸へと分解され、パルミジャーノ・レッジャーノならではの、あの豊かな香りと風味、凝縮感のある旨みが生まれます。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

熟成中のパルミジャーノ・レッジャーノ。チーズを作ってから販売できるようになるまで非常に時間がかかるので、このチーズを担保に銀行からお金を借りる事もできる。それくらい信用と価値のあるチーズなのです。


こうしたパルミジャーノ・レッジャーノの製造工程は、重労働を少しでも軽くするために機械化されたり道具によって幾分効率的にはなりましたが、基本的な製造方法は中世からほとんど変わっていません。


 

パルミジャーノ・レッジャーノの品質保護・管理

◆「パルミジャーノ・レッジャーノ」を名乗るための厳しい品質審査
12か月の熟成を経たパルミジャーノ・レッジャーノは、専門の検査官により1つ1つ品質をチェック。検査では、チーズをハンマーで叩いて亀裂や空洞等の異常が無いかを音で確認。そしてこの品質チェック時には次のように分けられます。

1.パルミジャーノ・レッジャーノ
2年以上の長期熟成にも耐えられる品質、パルミジャーノ・レッジャーノにふさわしい外観、食感、香りの特徴を全て備えていると認められたチーズ。
18か月目の任意審査で、さらなる高品質が保証されると、“Extra”または “Export”マークの焼印も押されます。

2.パルミジャーノ・レッジャーノのセカンドクラス (メッザーノ):
12か月以上の熟成には向かないもの。"パルミジャーノ・レッジャーノ・メッザーノ"としてすぐに販売されます。また、分かりやすいように、側面には何本ものラインが入れられます。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

風味に影響しない程度の亀裂等、軽微な欠陥が見つかったものは、パルミジャーノ・レッジャーノの「メッザーノ」として外皮に水平に溝が彫られ、すぐに消費される。

3.パルミジャーノ・レッジャーノとしてふさわしくないもの:側面の"PARMIGIANO-REGGIANO"の点文字を削り取られ、その名前も名乗れなくなります。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

この真ん中の焼印が、パルミジャーノ・レッジャーノとして認められた証です。


ちなみに「パルミジャーノ・レッジャーノ」を名乗るための主な条件をまとめると以下の通りです。
  • 使用するミルクは、定められた原産地域内で飼育され、定められた方法で給餌された牛のもの 
  • 定められた原産地でチーズの製造及び熟成、包装されたもの
  • 決められた伝統的製法で製造されたもの
  • パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会より、品質の証明及び合格マークの押印をされた品質の高いもの
パルミジャーノ・レッジャーノは、こういった原産地や製造方法等が厳しく規定され、法律で保護されている由緒正しい伝統的チーズです。そのブランドを守るために「パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会」が設立され、ブランドの保護や品質の維持、販売促進において重要な役割を果たしています。

 

パルミジャーノ・レッジャーノの美味しい食べ方

万能選手のパルミジャーノ・レッジャーノ。いろいろな食べ方がありますが、特におすすめのものをいくつかご紹介しましょう。

●まずはなんといっても塊を砕いてそのまま。砕きたての香りや味を堪能しましょう。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

塊を砕いてシンプルにそのままが最高!砕く時は小さなナイフでも良いが、専用の「アーモンドナイフ」があればベスト。

●バルサミコ酢をかけて。同郷のバルサミコとは抜群の相性!地元の人たちも一緒に楽しんでいます。なお、バルサミコはできれば品質の高い少しとろみのあるものがおすすめです。
●生ハムと共に。パルマのプロシュットを始め、サラミやコッパ、パンチェッタ、クラテッロ…と、パルミジャーノ・レッジャーノの産地には美味しいシャルキュトリ(食肉加工品)が沢山!地元のレストランに行くと 必ずと言ってよいほど出てくるのが、パルミジャーノ・レッジャーノと生ハム。地元に根付いた組み合わせは間違いありません。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ

生ハムとパルミジャーノ・レッジャーノは、産地でも定番の前菜。

●スープやサラダ、パスタやリゾット等の料理におろしたてをかけて。料理の味と香りを引き立て、ぐっと美味しくなる上に、見た目も華やかになります。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ、料理

お料理の仕上げにたっぷりと。とにかく沢山かけるのがポイント!

フリッターの衣やフライのパン粉におろしたものを混ぜて。チーズのコクでより美味しくなります。
●カルパッチョの上に薄く削ってのせて…等、何にでも合わせやすく美味しくしてくれる魔法のチーズです。

ちなみに合わせるワインの定番は、パルミジャーノ・レッジャーノと同郷の「ランブルスコ」と呼ばれる微発砲酒。もちろん、その他辛口白ワインやスパークリングワインとも相性抜群です。また、パルミジャーノ・レッジャーノに黒胡椒を挽きかければビールとも良く合います。
パルミジャーノ・レッジャーノ、チーズ、ワイン、ランブルスコ

手頃なお値段も嬉しい微発砲ワインのランブルスコは、赤が主流。産地では、昔はカフェオレボウルの様なお椀で飲んでいたそう。


なお、残った皮の部分ですが、こちらは捨てずに取っておいて、スープや煮込み料理を作る時に一緒に鍋に入れましょう。チーズの旨味成分が溶け出して良い出汁となり、料理がより美味しく仕上がります。また、2cmくらいにカットしてレンジで加熱しても美味しいおつまみになります。ぜひお試しを!

 

パルミジャーノ・レッジャーノの保存方法

パルミジャーノ・レッジャーノは、水分が少なく固いチーズなので、長期保存に向いています。とは言っても、出来る限り美味しい状態を保つ工夫はしたいもの。その為には以下の方法がおすすめです。

アルミホイルで包んで冷蔵庫へ:ラップは他の匂いがついたり蒸れたりしがちですが、アルミホイルだと、しっかり空気と光から遮断できるので、より良い状態に保てます。
なお、塊での冷凍はおすすめできませんが、おろして粉状にしたものなら冷凍できます。但し、早めに使い切りましょう。

 

2012年のイタリア地震の影響も乗り越えて

2012年5月20日にイタリア北部を襲ったマグニチュード6.0の地震。この地震でパルミジャーノ・レッジャーノの生産施設が多くの被害を受けました。熟成中のチーズが棚から落ちるなどして、なんと約30万個ものパルミジャーノがダメージを負う事に。それらは処分されたり破格で販売されたりしましたが、手間と時間をかけて大切に作られたパルミジャーノ・レッジャーノが一瞬にして商品としての価値を落としてしまったのは、本当に心が痛むことでした。

少しでも多くの購入が生産者さんの力になれたら、と思いつつ購入していた時期もありましたが、なにより抜群に美味しくて便利に使えるチーズなので、ついつい常備してしまう魅惑のチーズが、パルミジャーノ・レッジャーノです。

お料理やおつまみにはもちろん、小腹が空いた時にパクっと食べられるのも便利ですし、高タンパク低脂肪なので、老若男女はもちろん、スポーツをする方にもぜひお薦めしたい高機能チーズです。

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