実はイタリアでは超ポピュラーなチーズ「グラナ・パダーノ」

日本では知名度が今ひとつな、グラナ・パダーノ(Grana Padano ”グラーナ・パダーノ”と表記される事もあります)。イタリア半島の付け根あたり、広大なパダーナ平原で古くから作られている超硬質チーズで、品質や生産地等を保護するためのイタリアの認証制度、D.O.P.(原産地名称保護制度)により、製法・製造場所等が厳格に守られている、由緒正しきイタリア伝統のチーズです。
グラナ・パダーノ

グラナ・パダーノ

「グラナ・パダーノなんて、初めて聞いた!」という方も多いかもしれませんが、じつは本国イタリアでは、パルミジャーノ・レッジャーノよりもずっと生産量が多く、D.O.P.チーズの中での生産量は第1位! 「キッチンのハズバンド」と呼ばれるくらいに親しまれ、家庭の冷蔵庫には必ずと言って良いほど常備されている、極めて一般的なチーズです。

形は、重さ4kg前後もある大きな太鼓形で、水分、脂肪分が少ない超硬質のグラナ・パダーノ。割ると、内部はこのタイプのチーズの特徴でもある、もろもろと崩れる質感。色はやや黄色味を帯びたアイボリーです。熟成が長いチーズなので、熟成とともに増えていくチーズのアミノ酸が結晶化し、針の先ほどの白い小さな斑点となって全体に現れるのが特徴。そのまま食べて良し、お料理に使っても良しな、万能チーズです。


パルミジャーノ・レッジャーノとそっくり?見分け方は?

ところでこのグラナ・パダーノ、見た目はパルミジャーノ・レッジャーノにそっくり。よほどチーズに詳しい人でないと、その違いは分からないくらいです。それもそのはず、グラナ・パダーノの原産地、パダーナ平原では、昔から“グラナ”と呼ばれる粒状の組織を持つ太鼓形の大きな超硬質チーズが作られていました。

その中でも、パルマやレッジョ・エミリア、モデナで作られているのがパルミジャーノ・レッジャーノであり、もっと範囲の広いパダーナ平原一帯で作られているのが、グラナ・パダーノなのです(ちなみに“グラナ・パダーノ”とは、”パダーナ平原のグラナタイプのチーズ”の意味)。だから、お互い兄弟のようなもの。決して、パルミジャーノ・レッジャーノのイミテーションなどではありません。この辺りで他にも名前が違う似たチーズ(日本ではロディジャーノをたま~に見かける事があります)がちらほら見られるのも、そういった理由からなのです。

では、グラナ・パダーノとパルミジャーノ・レッジャーノの見分け方をご紹介しましょう。まず、一番わかりやすいのが外皮。それぞれのチーズ名が刻印されているので一目瞭然です。
グラナ・パダーノのロゴ

表皮に刻まれた、グラナ・パダーノのロゴ

次に、中の生地。グラナ・パダーノには針の先程の小さな白い点々がありますが、パルミジャーノ・レッジャーノには、直径5mmほどまでの大きめな白い斑点。この白い点の正体はアミノ酸の結晶で、熟成が長くなるにつれて大きくなります。一般に、パルミジャーノ・レッジャーノの方が熟成期間が長いので、白い斑点が大きくなるのです。絶対ではありませんが、目安にしていただければと思います。
グラナ・パダーノとパルミジャーノ・レッジャーノ

グラナ・パダーノ(奥)とパルミジャーノ・レッジャーノ(手前)。アミノ酸の結晶の大きさ、数が全く違うところも、見分けるヒントになる。

そして最後に味。グラナ・パダーノの方が味わいが優しく、しっとりとしていて口どけが良い。老若男女、ほとんどの方にとってより食べやすいチーズかと思います。家で、そのままワインのつまみにするなら、私はグラナ・パダーノの方が好きかもしれません。但し、これも熟成期間によって違ってきますし、個体差があるので絶対ではありません。目安のひとつにしていただければと思います。

ちなみに外皮に刻印されたチーズ名ですが、チーズ製造の最終段階の品質チェックで不合格となってしまった場合、この名を名乗るにはふさわしくないという事で刻印は削り取られ、“メッツァーノ”と呼ばれて売られるか、ただの粉チーズになるか、プロセスチーズの原料になるか。反対に、無事合格した場合は、認定の証としてチーズのロゴが大きく焼印されます。だから、グラナ・パダーノを名乗って販売されているというだけで、それはもう、品質が確かである事の証。こうやって、伝統的なチーズの製法と品質を守っているのです。
 

グラナ・パダーノの食べ方

グラナ・パダーノの食べ方は、見た目通りパルミジャーノ・レッジャーノと全く同じ。おろして料理に使う事が多いかもしれませんが、塊を割ってそのままいただくのも格別です。また、華やかな香りがとても良いチーズなので、出来る限り、おろしたて、切りたてを使うと、お料理がぐっと美味しく仕上がります。

具体的な食べ方はいろいろありますが、特に代表的なのが「ボロネーゼ(Bolognese)」。日本では“ミートソース“の名前で親しまれていますが、もともとはイタリア、エミリア・ロマーニャ州の郷土料理。地元でたっぷりかけて使うのは、もちろんグラナ・パダーノです。

ちなみに“ボロネーゼ”は“ボローニャ風”と言う意味ですが、ボローニャはエミリア・ロマーニャ州の州都です。
ボロネーゼ

ミートソースとして親しまれるボロネーゼ。本来は、グラナ・パダーノで仕上げるパスタです

そしてもう一つ、グラナ・パダーノを使った郷土料理で有名なのが、「リゾット・ミラネーゼ(Risotto Milanese)」。サフランの香りと黄金色が特徴のシンプルなリゾットです。

こちらの“ミラネーゼ”とは“ミラノ風”と言う意味。グラナ・パダーノの産地のひとつ、ロンバルディア州の州都、ミラノから付いた名前です。
リゾット・アッラ・ミラネーゼ

サフランの黄色が鮮やかな、リゾット・アッラ・ミラネーゼ。グラナ・パダーノを使うのが伝統的なレシピです。

他には、スープやサラダ、パスタやリゾットにおろしたてをたっぷり混ぜたりかけたり、フリッターの衣に混ぜたり、カルパッチョやサラダの上にピーラーで薄く削ってのせてたり。とにかく、旨味をプラスしてくれる便利な万能調味料の感覚で使ってみましょう。ひと味足りない時にはグラナ・パダーノ、見た目に華が欲しい時にもグラナ・パダーノです!

もちろん、塊をかち割ってそのままつまんだり、さらにバルサミコ酢や蜂蜜、胡椒等をかけていただくのも美味。優しい味わいは、ワインのつまみとしてだけではなく、朝から晩までいつ食べても体にしっくりきますし、牛乳やお茶、コーヒーと合わせても違和感ありません。小腹を満たすのにもぴったりです。

パルミジャーノ・レッジャーノが夜のレストランが似合うハレの日のチーズだとしたら、グラナ・パダーノはいつもの自宅が似合うケの日のチーズといったところでしょうか。

蛇足ですが、イタリアでは「料理下手ほどグラナ・パダーノを消費する」と言われているそう。お料理の味が今ひとつだな、と思った時もこのチーズをたっぷりと使えばあら不思議!味が決まって完成度の高い美味しいお料理に変身するからでしょう。

パルミジャーノ・レッジャーノに迫る旨みを持ったグラナ・パダーノ。パルミジャーノ・レッジャーノよりもお値段は若干お安めなので、料理下手うんぬんは気にせず、どんどん使って日々のお料理を格上げしていただけたらと思います。


グラナ・パダーノの基本データ

  • タイプ:ハードタイプ
  • 原産地:生産地域は、イタリアのポー川左岸(ノヴァラ、トリノ、アスティ、ベルガモ、コモ、クレモーナ、レッコ、マントヴァ等)、レーノ川右岸(ボローニャ、ミラノ、トレント、トレヴィーゾ、ヴェローナ等)及び、フェッラーラ、フォルリ・チェゼナ、ピアツェンツァ、ラヴェンナ、リミニの各県。乳の生産は、上記及びボルツァーノ県のアンテリーヴォ、ラウレーニョ、トロデーナ等の村々
  • 原料乳:牛乳(部分脱脂の無殺菌乳)
  • 形:太鼓形の円筒形。側面はふくらみを帯びている。上下の面は平ら
  • 大きさ:直径35~45cm、高さ約18~25cm
  • 重さ:24kg~40kg
  • 表皮の色:黄金色~褐色がかった麦藁色
  • 中身の生地の色:乳白色~黄色がかったアイボリー
  • 熟成期間:最低9か月
  • 固形分中脂肪分:最低32%
  • 旬:1年中
  • P.D.O.(原産地名称保護取得):1955年

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