暮らしの歳時記/正月の行事・楽しみ方(年末年始)

鏡餅とは? 由来や意味、飾り方・飾る時期

お正月には鏡餅――慣れ親しんだ風習ですが、改めて考えてみると疑問に思うことが多いはず。鏡餅とは何か、その意味や由来、飾り方や飾る時期の基本を紹介します。一体、鏡餅をなぜ飾るのか、なぜ鏡餅というのか、丸い餅を2段重ねる理由、鏡開きをするわけとは? 不思議だらけの鏡餅ですが、知ることでお正月の本意がわかります。

三浦 康子

執筆者:三浦 康子

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なぜ鏡餅を飾るの? 鏡餅とは? 意味や由来・飾り方・飾る時期 

鏡餅の由来、鏡餅の意味、なぜ鏡餅という、鏡餅をなぜ飾る……?鏡餅とは

なぜ鏡餅を飾るの? 鏡餅の由来や意味は? 改めて考えると鏡餅には不思議がいっぱい!

お正月には鏡餅――慣れ親しんだ風習ですが、あらためて考えてみると、疑問に思うことが多いはず。一体なぜ飾るのか、なぜ鏡餅というのか、なぜ丸い餅を2段重ねるか。また、なぜ「鏡開き」をするのでしょうか?

不思議だらけの鏡餅ですが、実は、鏡餅を知ることでお正月の本意がわかるのです。時代や地域によって解釈が異なる場合もありますが、ここでは鏡餅の意味や由来、飾り方や飾る時期などの基本を紹介します。
 
<目次>

鏡餅とは? 意味、なぜお正月に鏡餅を飾るのか 

鏡餅は、新年の神様である「年神様」の依り代です。そもそも一連のお正月行事というのは、新年の神様である「年神様」を家に迎えて・もてなし・見送るための行事ですが、お迎えした年神様の居場所が鏡餅です。

鏡餅の役割は、それだけではありません。年神様は、新しい年の幸福や恵みとともに、私たちに魂を分けてくださると考えられてきました。その魂の象徴が鏡餅です。

魂というと驚きますが、生きる力、気力だと思ってください。昔は、年の初めに年神様から新年の魂を分けていただく、つまり、一年分の力を授かると考えられていたのです。分かりやすい例に「数え年」があります。毎年魂を分けていただくということは、その数を数えれば年齢になります。そこで、生まれた時が1歳で、その後は元旦がくるたびにみんな一斉に年をとる「数え年」だったわけです。

では、どうやって年神様から魂を分けていただくのでしょう? 家にいらした年神様は鏡餅に依りつきます。すると、鏡餅には年神様の「御魂(みたま)」が宿ります。この鏡餅の餅玉が、年神様の御魂であり、その年の魂となる「年魂」です。そして、年魂をあらわす餅玉を、家長が家族に「御年魂」「御年玉」として分け与えました。これがお年玉のルーツで、玉には魂という意味があります。
▷詳しくは「お年玉の由来・意味 お年玉の起源はお金じゃなく餅だった!」で解説

この餅玉を食べるための料理が「お雑煮」で、餅を食べることで体に魂を取り込みました。ですから、お雑煮には餅が入っており、お雑煮を食べないと正月を迎えた気がしないという感覚は正しいのです。餅というのは稲の霊が宿るハレの日の食べ物で、食べると生命力が与えられるとされています。

また、鏡餅には「歯固め」という意味も含まれていました。歯は生命の維持にとても大切で、丈夫な歯の持ち主は何でも食べられ、健康で長生きできます。そこで、固く丈夫な歯になるよう願い固いものをいただく行事を「歯固め」といい、固くなった鏡餅を食べました。
 

鏡餅の由来、なぜ鏡餅というの? なぜ鏡?

昔の鏡に由来します。昔の鏡というのは丸い形をした銅鏡ですが、古くは弥生時代から使われ、三種の神器の一つでもあります。鏡は、日の光を反射し太陽のように光ることから、日本神話で太陽の神様とされる天照大神に見立てられ、神様が宿るものと考えられるようになりました。伊勢神宮をはじめ、鏡をご神体としているところがたくさんあります。

そこで、稲の霊が宿った神聖なものとして神様に捧げられるお餅を、神様が宿る丸い鏡に見立てて「鏡餅」と呼ぶようになり、年神様の居場所(依り代)として正月にお供えするようになりました。
 

なぜ丸い餅を2段重ねるの?

丸い形は、前述のように昔の丸い鏡を模しており、魂の象徴でもあります。大小2段で陰と陽、月と太陽を表していて、円満に年を重ねる、夫婦和合などの意味も込められています。
 

鏡餅の飾り方、橙や干し柿などの意味は?

鏡餅の飾りにはすべて意味があります

鏡餅の飾りにはすべて意味があります

一般的には、三方(さんぽう/折敷に台がついたお供え用の器)に白い紙、または四方紅(四方が紅く彩られた和紙)を敷き、紙垂、裏白、譲り葉などの上に鏡餅をのせ、昆布、橙などを飾ります。また、地方や家によっては、串柿、勝栗、五万米、黒豆、するめ、伊勢海老などの縁起ものを盛ります。大事な鏡餅を供えるために、神聖な品々や縁起の良いものを添えていくわけです。

ひとつひとつに正月にふさわしい意味があるので、思いを込めてお供えします。

■橙
「代々」とも書く。果実は冬に熟しても落ちにくいため数年残ることがあり、1本の木に何代もの実がなることから、代々家が続いて繁栄することを意味しています。

■串柿
干し柿を串に刺したもの。柿は「嘉来」に通じる縁起もので、干し柿は「見向きもされない渋柿でも、修練の末には床の間の飾りにもなる」という高い精神性を表します。串に刺した串柿は三種の神器の剣を表し、「鏡=鏡餅、玉=橙、剣=串柿」で三種の神器を表すとも言われています。

また、串柿は「2・6・2」で10個刺してあるので、「いつもニコ(2個)ニコ(2個)仲睦(6つ)まじく」という意味も込められています。

■譲り葉
新しい葉が出てから古い葉が落ちるので、家督を子孫に譲り、家系が続くことを表します。

■昆布
養老昆布(よろこぶ)=喜ぶの意。古くは昆布の事を「広布」(ひろめ)と言い、喜びが広がる縁起もの。さらに蝦夷(えぞ)で取れるので夷子布(えびすめ)と呼ばれ、七福神の恵比寿に掛けて福が授かる意味合いもあります。また、「子生」(こぶ)と書いて子宝に恵まれるよう願います。

■裏白
シダの一種で、表面は緑色ですが、裏面が白いので後ろ暗いところがない清廉潔白の心を表します。また、葉の模様が対になって生えているので、夫婦仲むつまじく相性の良い事、白髪になるまでの長寿を願います

■紙垂
神様の降臨を示す雷を表しています。
 

鏡餅を供える場所は?

鏡餅は床の間に供えるのが理想的

鏡餅は床の間に供えるのが理想的

鏡餅を飾る場所は、住宅事情によって異なりますが、鏡餅の意味を考えると、判断しやすくなります。

鏡餅は年神様の依り代です。年神様は新年を司る神様ですが、ご先祖様であり、農耕の神様でもあると考えられており、新年の幸福や恵みをもたらすために家々にやってきて、鏡餅に依りつくとされています。お供えした場所に依りついてくださるので、鏡餅は1つに限らず、複数お供えしても良いわけです。

そう考えると、まずはメインの鏡餅を床の間へ、小さめのものを神棚や仏壇にお供えします。床の間がない場合には、リビングのように家族が集まる場所に飾ります。年神様がいらっしゃるところですから、テレビの上のような騒がしい場所や、見下すような低い場所ではなく、リビングボードの上などにきちんとお供えします。供える方角は、その年の恵方、または南向き、または東向きが良いと言われています。

その他にも、台所、書斎、子ども部屋など、年神様に来ていただきたい大事な場所にお供えします。
 

鏡餅を飾る時期は?

お正月の準備は、正月事始めと言われる12月13日以降にするのが古くからの慣わしとなっています。鏡餅は大掃除を終えてから飾るものなので、下旬に飾る家が多いです。

末広がりで縁起の良い12月28日に飾るか、遅くとも30日に飾りつけると良いとされています。29日は苦餅(苦持ち)・二重苦に通じ、31日は葬儀と同じ一夜飾りに通じて縁起が悪いとされているからです。

なお、29日を「ふく」と読み、12月29日についた餅を「福餅」と呼んだり、福を呼ぶよう29日に飾るところもあります。

年が明けたら、1月11日の鏡開きに、お供えしていた鏡餅をおろして食べます。松の内が15日までという地域では、15日(または20日)に鏡開きをします。
 

鏡開きとは

鏡開きとは、お供えしていた鏡餅を下ろして食べる行事です。この行事には、一家の無病息災を祈願するという意味が込められています。鏡餅は単なるお供え物というよりも、年神様が宿るところだと考えられているため、年神様の力が宿った鏡餅をいただくことでその力を授けてもらい、1年の一家の無病息災を願います。鏡餅は、供えて→おろし→開いて食べることに意義があるので全て食べることが大切です。

昔、「切る」という行為が切腹を連想させたため、鏡餅は刃物で切らずに木槌や手などで割るのが一般的です。
▷詳しくは「鏡開きの日とは?今年はいつ?やり方・由来・禁止事項・餅レシピ」で解説
 

鏡餅のおすすめレシピ

鏡餅の意味合いから考えると、お雑煮やお汁粉にするとよいでしょう。長い期間飾られていた鏡餅は水分が蒸発して硬くなっていることが多いので、お雑煮やお汁粉のように、焼いたり煮込んだりするレシピがおすすめです。また、揚げてしょうゆや塩で味付けし、かき餅にするのも人気です。

鏡餅に関してよくある質問

Q. 鏡餅にのせられているみかんの意味は?

A. 本来、鏡餅には橙(だいだい)をのせます。橙には代々栄えるという意味があります。

みかんは橙と同じ柑橘(かんきつ)類で、柑橘は「きつ」が「吉」に通じる縁起物です。また、みかんは橙色なので、それにかけて代々栄えますようにという意味が込められています。
 

Q. 鏡餅はいつ飾りますか?

A. 鏡餅は大掃除を終えてから飾ります。二重苦・苦餅につながる29日と一夜飾りの31日を避ける慣わしがあるので、末広がりで縁起のいい12月28日までを目安に、遅くとも30日には飾りましょう。29をふくと読み、福を呼ぶので縁起が良いとするところもあります。

 
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