長期優良住宅法の影響
1億円前後の物件で、2012年もっとも印象に残ったのは「パークコート六本木ヒルトップ」である。実物(竣工見学)であることが関係しているかもしれない。が、長期優良認定住宅「都心第1号」のタワーは、タワーマンションとは思えないほど、じつにゆったりとした住空間に仕上がっていた。階高を高く取り、フラットな天井で空間に心地よさをもたらす手法は、他の三井のプロジェクトにも影響を与えている。そこが好評価を助長させた。「パークタワー東雲」や「パークコート千代田富士見ザタワー」にも応用され、風通しの良い開放的な順梁アウトフレームが定着しつつあるように思える。
これまで都心タワーは、逆梁を用い、眺望の迫力を優先するケースも多々あった。しかし、場合によっては居住空間に窮屈さを生むことも否めなかった。最近は、(もちろん敷地条件やかかる制限なども関係するが、)階高を高く取り、梁の位置自体を上げることで、眺めの良さはそのままに開放性を増した現場が増えた。長期優良住宅制度の影響がどこまで市場に及んでいるかは未確認だが、永住に耐える居住空間に仕上がっていることだけは確か。
都心の将来性
屋上も特徴のひとつ。これまで三井は、屋上利用を積極的に推進してきたが、その集大成に思えた。ちょっとしたパーティーもできそうな大きなテーブル、日光浴を楽しむデッキチェアのコーナーは少し見えにくい位置に、芝生を敷いたゾーンもあり、子どもから大人までプライバシーを保ちながら、この空間を活用できそうな気がした。太陽光パネルも設置している。立地の魅力にも着目したい。もともと六本木は繁華街であるが、「パークコート六本木ヒルトップ」の現地周辺は一転再開発の進む落ち着いた街並みである。道も広く、緑も多く、電信柱もない。都市再生法に基づいて、着々と進められてきた「虎ノ門六本木エリア」を象徴するのような一角といえよう。
3A(赤坂、麻布、青山)が憧れの頂点とするならば、その次に賑わいの残る利便重視の渋谷や新宿、六本木が続く。そうした立地ステイタスの単純な並びは、いまや過去のものになりつつあるかも知れない。再開発の進行は、高層化を伴って空地を広げ、緑を増やし、街そのものを美しい景観に変えている。一方で、工法技術の進化は選択肢を増やし、それによって生まれた質の高い住空間に、目の肥えた顧客が集まる。エリアバランスの再編に加え、居住性のレベルを競う時代に入ったといえそうだ。
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