長周期地震動とは?
長周期地震動は、柔らかい堆積層の上に立つ超高層建築物または免震建築物で起こりえる地震被害のひとつである。大きくゆするような地表の振動に、固有振動(振り子が反対側に行って戻ってくるまでの時間)が2秒以上の建物が共振して、揺れが増幅する現象をいう。必然的に、都心部のオフィスビルやタワーマンションが対象になりやすい。東日本大震災では、西新宿の超高層ビル群内において、揺れ幅1mもの大きな揺れが10分以上続いた。ストレージの引き出しが勝手に出し入れを繰り返したり、コピー機がフロアを動き回ったりしている映像をご覧になった方も少なくないだろう。新耐震と呼ばれる現在の耐震強度が設定されたのが1981年(昭和56年)である。それに対し、長周期地震動がクローズアップされたのはここ数年のことといえよう。きっかけとなったひとつに、2004年10月に発生した新潟県中越地震時の六本木ヒルズ内のエレベーター損傷事故がある。
これは、震源地から約200kmも離れた六本木ヒルズ内のエレベーターを支えるロープが、昇降路内の突起物に引っかかり、エレベーターが非常停止。地震管制運転装置が作動しなかったことから、森ビルは長周期地震動の対策を早急に講じた。長周期地震動用の検知器を新たに導入し、地震発生時にはエレベーターを中間階に集め、ロープのたわみを抑えるようにしたのである。以来、比較的大きな地震時においても想定通りの作動を検証済みだ。
国の対応
国土交通省は、2010年12月21日「【超高層建築物等における長周期地震動への対策試案について】に関するご意見募集について」と題した発表を行っている。ここに書かれている内容を一部抜粋してみよう。○超高層建築物等を建築する場合への対策
・超高層建築物等の大臣認定の運用を見直し、[1]想定東海地震、東南海地震、宮城県沖地震の3地震による長周期地震動を考慮した設計用地震動による構造計算を求めるとともに、[2]家具等の転倒防止対策に対する設計上の措置について説明を求めます。
・また、今回対象の3地震以外の地震や、複数が連動する場合の設計用地震動について余裕を持った設計を行う場合の参考情報を提供します。
○既存の超高層建築物等への対策
・大臣認定を受けた超高層建築物、免震建築物のうち、今回対象の3地震による長周期地震動による影響が大きいものについて、再検証し、必要な補強等を行うよう要請します。
募集期間は2ヶ月。つまり、締め切った約2週間後に東日本大震災が発生したのである。長周期地震動対策の義務化を進めていた矢先に、新たな大地震時の長周期地震動のデータが、望まずも集まったことで、再検討を余儀なくされた格好となった。