マーケティング/マーケティング事例

激しい牛丼戦争のその後―“兵どもが夢の跡”(2ページ目)

これまで牛丼業界は激しい価格競争を繰り広げてきました。ところが最近は一転して価格競争は影をひそめ、牛丼各社は新たな試みに挑戦しています。果たして牛丼業界では何が間違っていたのか?戦略の過ちの検証と今後のあるべきマーケティング戦略を検証していきましょう。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

“牛丼御三家”の戦略の転換

これまでの価格競争が勝者なき不毛な戦いだと気付いた“牛丼御三家”は、戦略の転換を図ります。

牛丼御三家が発表する月次の数字を分析すると、これまでの低価格を武器に新たな顧客を呼び込み売上アップを図る戦略から、客単価を高めて売上アップを図る戦略へと舵を切ったことがわかります。

その一つの表れが吉野家でいえば、通常の牛丼よりも質や量をアップさせて、価格を高めに設定した「牛焼肉丼」なのです。

実際に牛丼各社今年に入って安売りをやめ、新メニューを投入して客単価を向上させる戦略に出ています。

その戦略の転換で最も成功を収めているのが、吉野家でしょう。吉野家は、比較的単価の高い新メニュー「焼味ねぎ塩豚丼」などを投入し、前年同月比で7月は108.3%を記録していることからも数字面で戦略の成功を見て取ることができます。

牛丼業界の戦略の転換

牛丼各社は客単価アップに戦略を切り替えた



“牛丼御三家”が抱える今後の課題とは?


牛丼業界のこれからのマーケティングとは?

牛丼御三家にはマクドナルドのマーケティング戦略が一つのヒントになる!

結局のところ、牛丼業界は激しい価格戦争を繰り広げた結果、低価格だけでは勝ち続けることはできないという結論に達したはずです。

それでは、牛丼各社はどのようにすれば今後現状の苦境から脱出することができるのでしょうか?

牛丼御三家が目指すべき一つのモデルとして、マクドナルドの経営が挙げられるでしょう。

マクドナルドもかつてはハンバーガーを安売りした結果、次第に飽きられて価格だけでは消費者から見向きもされなくなった失敗を経験しています。藤田前社長の時代には、店舗拡大と価格破壊を旗印に積極的に事業拡大路線をひた走りますが、消費者の急激な心変わりに一転業績不振に陥り、苦境に立たされることになったのです。

バトンを受けた原田社長は、規模よりも収益に重きを置き、不採算店舗の整理や商品のクオリティ向上に努めていきます。加えて100円マックなどで間口を広げる一方、期間限定メニューで奥行きを深めていくなど、顧客層の拡大と既存顧客を飽きさせない仕掛けを次々に実行に移していきます。

牛丼御三家にとっても価格で勝負するだけでは顧客を惹きつけ続けることは難しいといえるでしょう。やはり、価格だけではなく顧客が価値を感じるメニューを開発し、投入し続けることが、今の苦境から脱出する一つの重要な鍵を握るといえるのではないでしょうか。
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