大地震で倒壊の恐れが少ないマンションの形とは?
大地震が発生した時、地震に耐えるマンションと、耐えきれずに大きく損壊してしまうマンションと、どこが違うのでしょうか?いくつかのチェックポイントを「地震に強く安全なマンションの条件」にてご紹介していますが、1つ目の「建設時期」、2つ目の「構造形式・階数」に続き、今回はマンションの「平面形状」に着目してみましょう。マンションの平面形状とは?
マンションの平面形状とは、そのマンション(建物)全体を上からみた、建物の形のことです(【図1】参照)。【図1】マンションの平面形状とは、真上からみた全体の形のこと。
図面では「配置図」や「全体平面図」を見るとわかりやすいでしょう。「図面はちょっと…」という方は、新築マンションであればモデルルームに「全体模型」が置いてあると思いますので、それを真上から見てみてください。
マンションの平面形状でよくある形は?
マンションで最もよく見かける平面形状は「長方形」(【図2-い】)です。これは一敷地に一棟だけ建つ小~中規模の外廊下形式のマンション等でも多く採用されています。
そのほかに、
・住棟を2棟、L型に接続させた「L型配置」(【図2-ろ】)
・住棟を3棟、コの字型に接続させた「コの字型配置」(【図2-は】)
・住棟を少しずつずらして接続させた「雁行(がんこう)配置」(【図2-に】)
・いくつかの住棟を少しずつ角度を変えて、渡り廊下でつないだ配置(【図2-ほ】)
・中央に吹抜けのある「ロの字型配置」(【図2-へ】)は、近年の超高層マンションで採用されているカタチです。
マンションの平面形状はシンプルがベスト
【図2】の「い」~「へ」の平面形状を耐震性という観点から見てみると、地盤の揺れに耐えやすいのは、「い:長方形」と「へ:ロの字型配置」の形です。このようなシンプルな形の建物は、地震時に一体となって同じように揺れるため、特定の場所に大きな力が生じてしまう現象は起きにくいと考えられます。それに対し、「ろ:L型配置」「は:コの字型配置」「に:雁行配置」「ほ:その他のずれ」では、地震が起きた時にそれぞれの住棟が違う揺れ方をします。そのことによって、接続部分(図中の青の部分)に大きな力が加わり、ここが弱点になる可能性があります。
揺れのズレを吸収するエキスパンションジョイント
そのような事態を避けるために、多くのマンションでは住棟と住棟の接続部分(エキスパンションジョイント)に適切なクリアランス(空間)を設け、建物同士の縁を切ることで、二つの建物の揺れのずれを吸収する仕組みを取り入れています。エキスパンションジョイント部分は伸縮性のあるゴムなどでつなぎ、上に金属製のカバーをつけて水が入らないようにしています。複雑な平面形状をしていても、適切な場所にエキスパンションジョイントが適切に設けられていれば安心です。
中古マンション購入の際には要注意
10階を超える高層建物は、大地震が発生すると建物の揺れ幅も大きくなります。そのような建物では接続部分にかかる負担はそれだけ大きくなります。また築年数の古いマンションではこの接続部分に正しくエキスパンションジョイントを取っていないケースもあります。中古マンションを購入の際には気をつけてチェックしましょう。細長いマンションも地震に強いとは言いがたい
多棟配置でなく一棟配置のマンションでも、タテヨコのバランスがよくない極端な長方形の場合は地震に強いとはいえません。梁行き方向(短辺方向)と桁行き方向(長辺方向)の壁量の違いが大きいと、タテとヨコで違う動きとなり、弱い部分に被害が集中してしまうからです。一体となって動くためにはタテヨコのバランスも大切です。ある建物が揺れる時、一体となって揺れれば被害のリスクが減りますが、なるべく同じように揺れるには建物の立面的なバランスも必要です。「立面形状から見る地震に強いマンションの条件」で地震に強い立面形状について触れていますのでぜひご覧になってください。
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