最も規制が厳しい「第一種低層住居専用地域」
用途地域とは、都市計画法における地域地区のなかのひとつで、街づくりの枠組みを定める12種類の利用分類である。商業、住居、工業に大別されている。一覧は、右の画像をご参照いただきたい。それぞれに、建物の用途、建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)や容積率(延床面積に対する敷地面積の割合)、高さの制限、土地面積の制限などが定められている。例えば、病院や大学を、低層住居専用地域や工業地域では建てることができない。また工業専用地域では住宅の建設そのものが不可能である。
12のなかで規制のもっとも厳しい地域が「第一種低層住居専用地域」である。良好な住環境を守るためのエリアとされ、基本的に店舗設営も難しい。高さも10mに制限されている場合がほとんどで、建ぺい率・容積率も低いため、土地面積に対して大きな建物を建てることできないのである。
低層住宅がもたらす閑静な住環境
高さ10mと決められているため、3階建てが限界である。したがって、低層住宅街の空は大きく、地面にもよく陽があたる。冬でも街全体が明るく感じられるわけだ。建ぺい率が小さければ、空地割合が多くなるため、その分当然のように緑の量が増す。時間の経過とともに、木々は大きく育ち、そのうちに背の低い建物を覆い隠してしまう。緑に包まれた街並みが形作られていくのだ。家々のシンボルツリーが、時期を違えそれぞれの花を咲かせ、実をつける。閑静で緑豊かな環境では、枝が揺れる姿、葉がこすれる音で風を知り、野鳥や虫の鳴き声が季節の移り変わりを教えてくれる。住めほどに、自然を五感で味わう楽しさが染みついてしまうのである。
また、敷地がこまかく分割されるのを防ぐため、面積の最低ラインを決めている行政も多い。好環境を持続させることが狙いだ。住んでいる人の数が少ないために街なかでの渋滞や混雑も起きにくい。第一種低層住居専用地域は、さまざまシチュエーションにおいて、ストレスフリーな環境づくりを果たす。