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かけがえのない旅がそこにはありました。(3ページ目)

もしあなたがPlayStation3を持っていて、そしてゲームに多少のお金と時間を使うことに躊躇の無いぐらいのゲームユーザーであったなら、この記事を読まずに風ノ旅ビトを遊ぶことをお勧めします。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

ゲームというより旅

風ノ旅ビトの図

光が青に変わることで、黄金色だった砂漠がたちまち海の底のような景色になったり。それがまた本当に美しいんです。(イラスト 橋本モチチ)

風ノ旅ビトは、いわゆるゲームという枠をやや逸脱しているようにも思えます。よくゲームの話をする時に出てくるゲーム性という言葉を使うなら、風ノ旅ビトにはゲーム性というのはほとんど無いかもしれません。

絵画であるとか、彫刻などの古くからある表現に対して、コンピューターなどを使った表現をする芸術の分野にメディアアートというものがあります。どちらかというと、メディアアートに近い作品であるとガイドは感じました。

しかし、それよりもっと相応しいのは、ゲームであるというより旅である、という言い方かもしれません。そもそも、このゲームはthatgamecompanyという海外のスタジオが制作したもので、原題はJOURNEY、つまり旅なんですね。

ゲームを進める中で出会う美しい風景は、何も語りはしませんが、プレイヤーに様々なことを訴えかけます。度々出会う赤い布、そこかしこにある壁画、崩れかけた建物、突然現れる巨大な機械。それらが直接何かを言うことはありませんが、プレイヤーはそこで何があったのか、それぞれに思いを馳せます。

そして、もう1人のプレイヤーキャラクター。一期一会、袖振り合うも多生の縁とはこのことで、たまたま出会ったその人と、美しい景色を分かち合い、苦難を乗り越え、時にふざけあいながら、時に助け合いながら、言葉も交わさずに、誰かも分からず、終わってしまえばそれっきりの旅の中で、しかし確実に何かが通じあった気持ちになります。

たった2時間で終わりますが、その2時間の間、あまりの美しい景色に何度となく溜息をつき、仲間とのやりとりは心があたたまり、大変に充実した時間を過ごすことができます。

そしてゲームには、まだまだ新しい表現、新しい体験の可能性がたくさんあることを教えてくれる作品でもあります。美しいゲームの景色が美しい以上の何かを伝えることがあるということ。声も、言葉も、何もなくても心を通わせることができるということ。短い時間でも濃い体験を与えることができるということ。

これからもっとゲームの世界は大きく広がっていくのかもしれない、そんな期待すら風ノ旅ビトは感じさせてくれます。

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