売買の対象となる土地の一部に私道の権利が含まれているとき、これを「私道負担」といいますが、その負担方法や形態が法律で決められているわけではなく、現実にはさまざまなパターンが存在しています。

その利用にあたっては複雑な法律問題がからむことも多い私道ですが、今回は難しい話を控えめにして、私道負担の形態にどのようなものがあるのか、負担がない場合も含めてみていくことにしましょう。

なお、この記事のなかでは作図の都合上、公道に挟まれた通り抜け私道を例示していますが、行き止まりとなっている私道の場合でも基本的な考えかたは同じです。

また、実際には一つの私道に面する敷地がもっと多く、個々の敷地の形状もさまざまですから、かなり入り組んだ権利形態になっているケースも考えられます。


私道部分が一筆の土地の場合

敷地の前面が図1のように一つの土地(「筆」で数えます)になっているときは、これを特定の者が所有している場合と、関係者全員で共有している場合があります。
私道の権利形態その1
もともとその一帯が借地で地主が存在したようなとき、宅地が所有権に切り替えられた後も私道部分はその地主一人の名義(もしくは地主の相続人による共有名義)のままになっていることがあります。

このような場合には、私道の通行料・使用料などを徴収されるケースもあり、事前にしっかりと確認することが欠かせません。

また、広い開発分譲地などの場合に、道路部分が自治体などへの移管や寄附がされず、開発業者の名義のままになっていることもあります。公道に準じる取り扱いがされている場合もありますが、その維持管理がしっかりと行なわれているかどうかを確認することが大切です。

名義を持ったままの開発業者が倒産したときなどには、私道の取り扱いが厄介になることもあるのです。

一方、私道の形態は同じく一筆で、その私道に面する敷地所有者全員の共有になっていることもあります。とくにその私道が、位置指定道路として造られたもののときには、全員の共有となることが多いでしょう。

これが均等な共有持分、あるいは敷地面積に比例した共有持分になっていれば、何らかの問題が起きる可能性は比較的低いだろうと考えられます。

ただし、私道に面する敷地が多いときなどでは、公道に接する両端の敷地に私道の共有持分がないこともあります。このような場合には、相隣関係の問題から、玄関位置や車庫出入り口の位置に配慮が求められることもあります。

なお、もともとの私道の幅員が4m未満であり、建築基準法で認められた道路のときには、建築の際にセットバックをしなければなりません。その場合には図2のようにセットバック部分が、それぞれの敷地に付随する私道負担として加わることになります。
私道の権利形態その2
セットバック部分と私道負担の関係については、これから説明する他のパターンの場合でも基本的には同じです。


私道部分が敷地と一体化している場合

実際には私道が存在するのにもかかわらず、公図をみてもその痕跡が見当たらないという場合もあります。図3のように敷地部分と私道部分が一つの土地になっているものです。
私道の権利形態その3
このようなときに、土地の境界線と現実の私道の中心線が一致していればまだよいのですが、どちらか一方に片寄っていて私道負担に不均衡が生じていることもあります。

さらに、図3のように整然とした境界線による区画ではなく、図3-2のように土地境界線が不整形に入り組んでいるケースもあります。
私道の権利形態その3の2
図3-2のような場合には、私道部分だけではなく、敷地そのものが不整形な形状の寄せ集め状態になっていることも多いでしょうが……。

いずれにしても、このような私道の場合には私道負担部分の面積が不明確なままになりがちで、土地の登記簿面積と有効な敷地面積が大きく異なることも少なくありません。場合によっては私道内における土地境界の確定も難しいでしょう。

土地の売買にあたって、はっきりとした測量図面が存在しなければ、有効敷地面積を明確にさせるための測量を求めるようにするべきです。


私道負担部分が分筆されている場合

私道負担部分がしっかりと分筆されている場合も多いでしょう。このとき、最も一般的なのは、図4のように敷地に接する前面の部分を私道負担として所有(分有)するものです。
私道の権利形態その4
ところが、敷地の前面をそのまま所有していると「この私道部分も自分の土地だ」といった意識から、私道部分に鉢植えなどを置いたり、日常的に自転車やバイクを置いたままにしたりする事例も少なくありません。

そのようなことを防止するため、図5のように敷地とは離れた部分を私道負担として所有する場合もあります。
私道の権利形態その5
さらに、数十区画の開発分譲地などで2か所以上の私道(位置指定道路や開発道路)があるときには、図5の発展形として、図6のように敷地とはまったく離れた場所に私道負担の土地を持たせるケースもあります。
私道の権利形態その6
このように敷地と私道負担部分が離れていれば、誤った解釈や利用による近隣トラブルが起きる可能性はほとんどないでしょう。

ところが、住宅ローンに伴う抵当権の共同担保がなく(売主が住宅ローンを借りておらず)、かつ、権利証を紛失していたようなケースで、この私道負担の存在に気付かないまま売買が行なわれ、私道負担部分の名義が旧所有者のまま残ってしまっている例も見受けられます。

所有権移転漏れの私道負担は、その解消や処理が厄介になることもあるので、あるべき私道負担の土地がない、と言われたときには、改めて念入りに調べてもらうことも必要です。


ここでは、いくつかの私道負担の種類、バリエーションを説明しましたが、実際にはこれらのうちいくつかが組み合わされたようなパターンもあります。

私道の利用をめぐって何らかのトラブルが生じたとき、その権利の複雑さが解決の障害になることもあるため、十分に注意しなければなりません。


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