不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

隣家の屋根が越境していたら……?

隣家の屋根など建物の一部が越境していることも、古くからある住宅地などでは意外と多いものです。越境があるような物件を購入するときにはどうすればよいのでしょうか? (2017年改訂版、初出:2005年12月)

執筆者:平野 雅之


購入しようとする土地や一戸建て住宅の敷地に、隣家の屋根などが越境していることは意外と多いものです。



question
購入を検討している敷地があるのですが、よく見ると隣家の屋根の先と雨どいが敷地の境界線からはみ出しているようです。不動産会社の人を通じて売主に聞いてもらったところ、「若干は越境しているがこれまで隣家の人とは仲良くやってきたので、いままでは特に苦情を申し入れたことはない」という返事でした。このような物件を買うときにはどうすればよいのでしょうか?
(群馬県前橋市 匿名 40代 女性)



answer
隣家の屋根などが、自分の敷地あるいは購入しようとする敷地の上空にまで越境していることは、とくに古い市街地の住宅などでは決して珍しいことではありません。

現代のように境界線が意識されない時代に建てられたものや、以前は借地だった物件、建築当時における境界線の認識が双方とも間違っていた場合、さらにはお互いに越境し合っている建物などもあります。

住宅密集地

古い住宅密集地では、お互いに越境し合っていることも珍しくない

屋根や建物の一部分にかぎらず樹木の枝などでも同様ですが、このような越境があると自分の敷地で建て替えようとするときに障害となったり、強い雨のときに隣家の雨水が自分の敷地へ流れ落ちてきたり、そうでなくてもさまざまな弊害を伴います。

しかし、越境しているからといって一方的に隣家の屋根などを切除することはできません。

法的な解決をするためには裁判所へ訴訟を起こし、判決に基づく強制執行をすることになりますが、そうすれば隣人関係は気まずいものになり、安らげない日々を送る「苦痛の住まい」にもなりかねないでしょう。

それでは、現実のところどうするのが一番よいのでしょうか。

購入しようとする敷地に隣地からの越境などが疑われるとき、まず最初に重要なのは敷地境界を明確にすることであり、境界が明らかにならなければ次の段階へ進むことはできません。

この場合、すべての敷地の境界ポイントに杭や鋲などの境界標識があり、なおかつ、敷地が接するすべての隣地所有者など(道路や公園などの公有地と接していればその管理者も含む)の立会印が押された「確定測量図」があれば最もよいのですが、実際にはそのような図面がなく、境界標識があっても一部だけというケースが多いものです。

境界が明確でないときには既存のブロック塀やフェンスなどが境界線として有効かというと、これはあまり役立たないのが実情でしょう。

ブロック塀などの全体が、初めからどちらかの敷地へ一方的に入り込んでいることも多いうえ、隣地と共同で境界線上に立てたはずのブロック塀が、よく調べてみたら境界線から少しずれていたなどという例もあります。

そのため、隣家の一部がこちらに越境しているのだと認識していたのに、境界をしっかり調べ直してみたら実はこちらの建物が隣地に越境していた、などということも考えられる話です。


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