都市計画区域内において建築物の敷地は、建築基準法で定められた道路に2メートル以上接していなければなりません。ところが、まわりをよく観察してみると、建築基準法の要件を満たしていない道路が意外と多く存在することに気付くでしょう。
このような道路は「通路」あるいは「法定外道路」などと呼ばれます。
ただし、あくまでも法律で規定されていない道路のことですから、その用語の定義自体も存在しません。そのため、「認定外道路」「基準外道路」などと呼ばれる場合もあります。
どれが正しいというわけではありませんが、不動産広告などでこれに該当する場合には、「法定外道路」と表示されているケースが比較的多いようです。
また、建築基準法で認められていない道路を総称しているため、ときには法律の手続きを踏まないで造られた幅6メートルの「法定外道路」などが存在する場合もありますが、その大半は極めて細い道になっています。
法定外道路のうち、比較的真っすぐで通り抜けられるものは、昔の里道(りどう)や農道だった可能性が高いでしょう。
里道および農道は、明治時代に整備された旧公図(字限図)や旧土地台帳附属地図などで赤色に着色されていたことから、「赤道(あかみち)」または「赤線」「赤地(あかち)」などとも呼ばれます。
明治時代に国内の道路は、国道、県道、里道などに分けられましたが、車がない時代の生活道路だった里道は当初から幅の狭いものが多くを占めていたようです。
1950(昭和25)年の建築基準法施行に伴い、基準日以前から建築物が建ち並んでいた里道のうち、原則として幅員1.8メートル(1間)以上のものは、セットバックを要件に法42条2項道路として救済されましたが、それ以外のものは規定から外れて取り残されました。
正確な調査資料があるかどうかは分かりませんが、全国に存在する「赤道」の総延長は145万キロメートルに及ぶとの推定もあるようです。
また、昔の水路や排水路だったところは旧公図などで青色に塗られていたことから、「青道(あおみち)」「青線」「青地」などと呼ばれます。
しかし、現地を見ても「赤道」なのか「青道」なのか判断しづらい例も多いでしょう。まわりの敷地が一段高くなっていれば「青道」の可能性が考えられます。
ちなみに、赤道や青道などで現にその機能を有しているものは「法定外公共物」と呼ばれ、以前は国の所有物でしたが、その多くは2000年に施行された「地方分権一括法」に伴いそれぞれの市町村(東京23区は各区)へ無償譲渡されています。
それに対して、機能を喪失した赤道や青道などは「旧法定外公共物」として国が所有し、財務局が管理しています。
一方で、歴史的な街並みが保存されている地区では、細い通りが意図的に残されている場合もあります。このようなところの法定外道路は、その成り立ちや自治体の条例などを調べなければ何ともいえません。
住宅などに取り囲まれた細い道路で、赤道でも青道でもないものは、単なる「通路」(私有地)です。以前は一帯が借地だったところや、戦後の住宅難の頃に集中して建てられたところなどに比較的多くみられるようです。
赤道か青道か私有通路かを問わず、法定外道路にしか接していない敷地では、原則として建築確認を受けることができません。そのため、住宅の建て替えがなかなか進まず、老朽化した建物も目立つでしょう。
自治体による耐震改修の補助制度などでも対象外とされることが多く、災害対策が大きな課題となっています。近年は、このような敷地の建物でも補助対象とする自治体がいくつか出てきたようですが……。
また、自治体の条例などによる取り締まりが可能な場合を除き、法律による道路の規制が及ばないため、通路部分が植木鉢で埋め尽くされているような例も見受けられます。大規模災害時における避難路確保のうえで、大きな障害ともなりかねません。
このような法定外道路だけに接する敷地や住宅はそれなりに安くなるものの、あえてそれを購入する人は少ないでしょう。
その一方で、購入する敷地の接道条件に問題はなくても、その背後にこのような住宅密集地を抱えているケースは意外と多いものです。いざというときの避難路や、延焼の危険度など、周辺の状況もよく観察したうえで購入する住宅を選びたいものです。
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