業界の主流と逆の切り口を検討することによって容易に差別化が可能になる!
業界の主流と違う切り口でマーケティングを行えば不毛な競争に巻き込まれずに済む!
それは従来とは違う切り口でマーケティング戦略を検討すると成功確率が高まるということです。
たとえば、今回のトマトの記録的な売上は、トマトの持つ脂肪を燃焼させる機能がマスメディアを通して広く知れ渡った結果によるものです。これは図らずもトマトの機能面がクローズアップされ、多くの消費者が「手軽にメタボを解消したい」とか、「ダイエットしたい」という必要性や欲求を高めて購入に走ったということができるでしょう。このように製品の機能面を強調して販売を促進していく手法は“機能志向のマーケティング”と呼ばれています。
一方で、従来食品業界では、売れる要素として“見た目”や“おいしさ”など、人の感性に訴えかけるマーケティングが主流といえます。これは機能志向に対して、“感性志向のマーケティング”と呼ばれています。
この2つの切り口を上手に使い分けることにより、差別化を実現することが可能になるのです。
たとえば、丸の内タニタ食堂は、“400万部を超えるベストセラーとなった『体脂肪計タニタの社員食堂』の料理が実際に食べられる”をコンセプトに今年の1月にオープンしましたが、オープン当初から全国各地から来店客が殺到する賑わいを見せています。
ここで丸の内タニタ食堂も、1食わずか500kcalで健康的な食生活が実現できるという、食事の機能面のアピールがヒットにつながっていったといえるでしょう。
このように、感性志向が主流の食品業界では、他の多くの企業に倣って見た目やおいしさを追求してしまうと激しい競争に巻き込まれてしまいます。そこで、切り口を変えて機能面をメインにしたマーケティングを実施すれば、ライバルも少なくなって差別化も比較的容易になり、成功確率を高めることも可能になるのです。(※1)
感性志向と機能志向の切り替えはどんな業界でも可能!
感性志向と機能志向を切り替えて成功を収めることができるのは、何も食品関連の業界だけではありません。事実、どんな業界でも視点を変えることによって爆発的なヒットを生み出すチャンスを掴むことができるのです。たとえば、パソコン業界は典型的な機能志向の業界といえます。ユーザーがパソコンの購入を決定する際には、CPUの性能やメモリーやハードディスクの容量、OSの種類といった機能を中心に購入を検討するはずです。もともと部品に関しては、CPUはインテル、OSはマイクロソフトなど同じメーカーが提供しているだけに、機能が同じであればどのようなパソコンメーカーであれ使い勝手が大きく変わることはありません。
このいわば機能志向の業界に感性志向を取り入れれば差別化が容易になると考えてもあながち間違いではないでしょう。そして、実際に感性志向を取り入れて大成功を収めたのがアップルといえます。アップルは、それまでスペックをいかに高めるかで激しい争いが繰り広げられてきた業界において、“デザイン”という感性志向を取り入れたiMacという当時では斬新なコンセプトのパソコンを投入します。そして、これまでになかったデザインを身にまとったiMacは、瞬く間にユーザーを魅了し爆発的な売上を記録することになるのです。
かつて、Windowsパソコンを製造するメーカーがiMacに酷似した製品を製造販売し、アップルから提訴されて販売休止に追い込まれるという事態にまで発展したことからもiMacのインパクトがわかるでしょう。
これらの事例が示唆するのは、自社が属する業界を感性志向と機能志向という切り口から分析したうえで、逆の志向をマーケティングに取り入れれば成功の確率を高めることができるというポイントです。
もし、自社の属する業界が、見た目や顧客の感情が重視される感性志向の場合は、機能志向の要素を取り入れ、逆に自社が属する業界が製品のスペックを重視する機能志向の場合は、感性志向の要素を取り入れることによって、同じ方向性で激しい競争を繰り広げることから解き放たれ、差別化を実現して売上アップを図ることができるのではないでしょうか。
(※1) 食品関連の業界で機能面を強調したプロモーションを展開する場合、薬事法で表現できるメッセージが制限されているので、細心の注意を払う必要があります。