6.融資申請
資金調達が成功しなければ、起業・独立開業は成しえない
ある程度、物件探しが進んできた時点で、創業融資の申請準備を進めていきましょう。ここまで作成を進めてきた事業計画書を、融資申請が可能なレベルまで完全に仕上げていきます。同時に日本政策金融公庫、自治体の創業融資、どちらを申し込むか検討を進めます。
飲食業で日本政策金融公庫の創業融資を300万円超で申し込む場合、店の所在地の都道府県知事の推薦書を取得しなければならないという特殊な手続きが入ります。都道府県により推薦書の発行事務を行う場所は異なります。スムーズに融資実行まで進むように事前に都道府県のホームページなどで確認しておきましょう。例えば、東京都の場合、財団法人東京都生活衛生営業指導センターが推薦書の発行を行っています。
全額自己資金で用意できる場合以外は、資金調達の成功なくして起業・独立開業は成り立ちません。一発勝負の大事な局面です。慎重に進めましょう。創業融資についての詳細な情報は、自己資金はどのくらい?起業での資金調達、日本政策金融公庫で新創業融資を調達するノウハウ、公庫創業融資の獲得率を上げる創業計画書の書き方をご覧ください。
7.内装デザイン、工事着工
物件が決まり、融資の実行が見えれば、内装デザイン、工事着工へと進んでいけます。自分のお店を持つという夢をやっとかなえられるわけですから、内装やデザインにこだわりを持つのは当然ですが、削れるところは削ってなんとか予算内に納めるように努力しましょう。不動産業者の紹介先の業者だけでなく、できるだけ多くの業者から幅広くデザイン案や見積りをもらうことをオススメします。
8.許可申請
飲食店を経営するにあたっては、食品営業許可のうち、飲食店営業許可を受ける必要があります。許可を受けずに営業した場合、営業停止となり、行政処分や法的な処罰の対象となる場合があるため忘れずに許可を受けるよう注意してください。
飲食店営業許可を受けるためには
・食品衛生責任者を置くこと
・店舗、厨房などの施設が一定の基準を満たしていること
・申請者が欠格事由と呼ばれる要件に該当しないこと
が必要です。
許可を受けるためには、保健所に各種書類や図面の作成提出を行い、保健所職員による実地検査があります。工事の進捗状況や開店予定日を確認しながら、時間的な余裕を持って申請しましょう。許可申請手続きについての時間的な余裕がない場合は行政書士への依頼を検討するのも一つの方法です。また、飲食業でも経営時間や業態によっては、深夜における酒類提供飲食店営業開始届出や風俗営業許可の手続きが必要なケースがあります。事前によく確認しておきましょう。
9.店舗什器備品の準備、空間作り
様々な準備でかなり忙しくなってくる時期ですが、店舗の什器備品についての準備も進めていきましょう。厨房機器などの設置にあたり、ガス工事、電気工事等が必要な場合、内装工事の進捗状況とも関連してくるため、スケジュール調整を行います。照明の調整やBGMや音量調節なども空間作りの大事な要素です。細部にまで気を配りましょう。
10.メニュー開発、メニューブック作成
店舗の準備と並行してメニュー開発にも取り組みましょう。絶対に他店に負けないメニューを一品決め、店の売りとして前面に押し出していきましょう。あれこれとあまりにも多くのメニューを提供すると、マーケティング上、焦点がぼけるだけでなく、調理や注文の上での効率化にも影響します。また、滅多に出ないのに、それにしか使わない材料を使用する料理をなるべくメニューから外す工夫も必要です。材料原価率(F)を下げ、廃棄ロスを下げることにつながります。
当初、意識しないかもしれませんが、メニューブックは飲食店にとっての営業マンです。食欲をそそるような写真を豊富に載せていて、注文をどんどん取ってくることができるメニューブックは、店にとって優秀な営業マンなのです。ところが、この点を意識せず、なるべくお金を浮かせようとして手作りで文字ばかりのものを作成してしまう店も多く見受けられます。非常にもったいないことです。できれば、メニューブック作成についてもプロの意見を聞いて作成することをオススメします。
11.業者選定、打合せ
食材や飲料などの仕入業者などを選定し、打合せをしておきましょう。支払の締日、支払日、営業保証金が必要か否かなど、取引条件をよく確認しておきましょう。条件によっては資金繰りに影響を与えるため、十分に注意が必要です。また、ビールなど、その店でよく売れる飲料についての仕入れ価格は、今後の利益率を大きく左右します。メーカー営業マンとの真剣な交渉が重要です。複数のメーカーと交渉も必要でしょう。
開店当初は食材を多く仕入れて廃棄ロスが増える傾向にあります。赤字にならないためにも仕入れすぎにも注意してください。
12.人材採用、教育
この段階までに人材の採用を開始しましょう。採用方法は知り合いなどに声を掛ける、ハローワークで募集する、アルバイト情報サイトなどで募集するなどの方法があります。
採用後は、本番までに様々なことを詳細にルール化し、全員に浸透させておくことが社長や店長としての役目です。こうしたことが不十分だと、お店のオープン後に大混乱に陥り、不満をもった退職者が続出するという失敗が起こりやすいため注意が必要です。また、ムダな人件費を発生させないためにも、最低限必要な人員をよく考え、シフトの組み方を検討しましょう。飲食業というあまり労働条件が良いとはいえない職場でスタッフのモチベーションをどうやって維持していくのか、今後、接客サービス向上のためにも重要となっていきます。
13.シミュレーション
店のオープンの前日までに試食会などの形で知り合いなどを招待し、実際のオペレーションをやってみることがオススメです。お客様目線での意見集約にも協力してもらい、そこでうまくいかなかった点はオープンまでに改善して本番に活かしましょう。
14.広告宣伝
特にここは強調したいところです。広告宣伝を甘く見ないでください。お店を出したら、通行人が勝手に来店してくれるなんてことはありません。魅力的なコンセプト、メニューがあって、わかりやすい看板を目立つように出さなければ、思うように売上は上がりません。開店したらまずは地域やweb上で店の存在を知ってもらうこと、魅力を伝えることが一番初めにするべきことです。
当初の事業計画書の作成段階で、広告宣伝予算を甘く少なめに見積もるケースが多くあります。どの時期に、誰に対してどういうプロモーションをしていくのか、そしてその予算はいくらかかるのか、詳細に検討し実行しましょう。ある程度のお金を投資しなければ、集客は難しいということを意識してください。ただ、もちろんお金を掛ければ集客できるというものでもありません。大手飲食店広告サイトへ掲載したり、店のホームページを作成したりしても、web上で多くの飲食店の中に埋没してしまっては意味がありません。魅力的なコンセプト作り、絶対に負けない一品、魅力を感じてもらう見せ方、そして多くの人に知ってもらうようにするテクニック。全てが揃って初めて集客が可能となります。
飲食店は集客できるかどうかが成功不成功の分かれ目と言っても過言ではありません。当初の構想段階から集客についてはみっちりと検討するべきです。