世界無形文化遺産、宗廟祭礼

香大庁

宗廟祭礼で使われる香(お香)・祝(祝い文)・幣(紙の位牌)を収めた香大庁

宗廟は氏神と交信する場所。そして朝鮮王朝の時代、年に五度の祭祀を通して行われた。現在年に一度、5月の第一日曜日に開催されている宗廟祭礼(宗廟大祭)だ。簡単にその内容を紹介しよう。

正殿の柱

正殿の柱

祭礼を控え、王や皇太子は1週間前からお酒や音楽鑑賞、歌や舞いなど禁じられ、3日前から沐浴を行った。そして前日には宗廟の斎宮に入り、心身を清めたという。

そして当日、王たちは斎宮を出て正殿・永寧殿それぞれを訪れ、神位を取り出し、音楽や舞踊をバックにお香を焚き、酒を注ぎ、神饌などのお供えをして神々をもてなす。そして神の恵みであるお酒を皆でいただいたのち、彼らを送り出し、最後は使った祝文などを燃やして祭礼は終了する。

 

現在の宗廟祭礼は、王がいないので李氏の子孫が式を執り行っている。人気があるのが御駕行列と呼ばれる王の行列で、王の神輿(みこし)を中心に、数百人の文官・武官・舞妓たちが華麗な衣装に身を包み、景福宮から宗廟にかけてを練り歩く。その様子は自由に見学することができる。

なお、宗廟祭礼は2001年に「宗廟先祖のための儀礼・儀式及び祭礼音楽」として「第1回人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」に選ばれ、2009年に「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に移行され、世界無形文化遺産となった(「傑作宣言」は無形遺産条約が発効するまでの暫定的なリスト)。

ソウルの世界遺産「昌徳宮」「朝鮮王朝の王墓群」

昌徳宮の仁政殿

仁政殿。昌徳宮の中心となる建物で、内部には玉座が置かれ、臣下はこの庭に位階の順に並んで王に謁見した

ソウルには朝鮮王朝に関係する3つの世界遺産がある。宗廟以外の世界遺産も簡単に紹介しておこう。

■昌徳宮
昌徳宮・大造殿

王妃をはじめ、王の家族が暮らした昌徳宮・大造殿の一部。色使いが中国・韓国らしい

1405年に景福宮の離宮として建てられたものだが、景福宮とは趣がまったく違う。

景福宮は北京の紫禁城を模して建てられており、整地した平地を四角形の城壁で囲い、内部を整然と区画整理して、全体を左右対称で整えている。一方昌徳宮は、山の緑や川などの植生や地形をそのまま利用しており、庭園のような情緒ある造りになっている。

内部には、王の即位や謁見などの公式行事が執り行われた正殿・仁政殿、政治や議会の舞台として使われた宣政殿、王が暮らした熙政堂、王妃が生活した大造殿など、計13棟の建物がある。秘苑といわれる庭園も美しく、川や池の周囲には四季折々の花が咲き、王たちは楼閣で庭園を眺め暮らしていた。

 

他の宮殿と同様、1592年、豊臣秀吉の文禄の役で大半が焼失したが、17世紀に再建。その後何度も火事にあうがそのたびに修復され、当時の姿をもっともよく残す宮殿として価値が認められて、世界遺産に登録された。

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宣陵の陵寝

成宗が眠る宣陵の陵寝。宣靖陵は3つの陵があることから三陵公園とも呼ばれている

宗廟は歴代の王や王妃の神位を祀っているが、王の遺灰があるわけではない。王の墓は日本の古墳のような形をした王陵に収められている。そして朝鮮王朝40基の王陵を一括登録した世界遺産が「朝鮮王朝の王墓群」だ。

一般的に、王陵は風水によって首都近くにあるもっともよい山が選出され、山全体が聖域として祀られた。山の中腹に陵寝と呼ばれる丸い墳墓を造り、ここに王を安置した。

 

宣陵の石像

宣陵の石像。文官・武官・動物たちの石像が陵を守っている

ソウル市内には獻仁陵・宣靖陵・燕山君墓・泰康陵・懿陵・貞陵という王陵があるが、訪ねやすく、よく整備されているのが宣靖陵だ。

宣靖陵は、9代国王・成宗の墓である宣陵と、その王妃・貞顕王后の陵、11代国王・中宗の墓である靖陵からなっている。地下鉄2号線には宣陵駅という駅もある。

ソウル市外なら、9つの王陵が集まる九里の東九陵がオススメだ。

なお、ソウル近郊には「南漢山城」「華城(ファソン)」という世界遺産もある。いずれもソウル中心部から30km以内なので世界遺産ファンは訪ねておきたいところだ。