神が降り立つ場所、宗廟

宗廟・正殿

切妻屋根の平たいデザインが神々しさを醸し出す正殿の意匠。京都の三十三間堂にも少し似ている

宗廟は氏神を祀り、祈りを捧げる場所。人のための場所ではなく、神が地上に降り立つための聖地なのだ。

三道。

三道。神香路を中心に、左右に世子路と御路を従えている

たとえば道。外大門をくぐると、道に四角い石=薄石を敷き詰めた3本の筋が走っている。西側の筋が皇太子が歩く世子路、東側が王が通る御路、そして中央が氏神が通る神香路で、神々の道がしっかり用意されている。

たとえば門。正殿の南門は神が通る門で、南神門とも呼ばれる。神は中央の門を通るとされ、ここを人が通ることはできない。また、神位を祀る部屋の門は板門と呼ばれるが、ここにも神が通るための隙間が用意されている。

たとえば神位。王や王妃の魂の名前を書いた木製の位牌のことで、神が宿る一種の依り代だ。宗廟には朝鮮王朝歴代の王と王妃・功臣の神位が多数祀られている。

 

そして神を呼び出し・もてなし・見送る祭祀が宗廟祭礼だ。祭礼で王は食事や音楽で神々をもてなして国家の繁栄を祈る。

宗廟はそれほど大きな施設ではないし、派手な建物があるわけでもない。宗廟が世界遺産に認められたのは、朝鮮王朝500余年の宗教センターとして機能しつづけ、そして王朝が滅んだ現在でもその伝統が伝えられているからなのだ。

宗廟を構成する建造物群

正殿・南門

正殿の南門。南神門とも呼ばれ、神々は中央の門の上部にある格子を通ると考えられた

宗廟にある主な建物を紹介しよう。

■正殿
1395年に完成した宗廟の中心的な建物で、神位を祀る19の部屋に19人の王と30人の王妃が祀られている。縦12m×横101mと横に極端に長いが、王朝の歴史が下るにつれて神位を祀る部屋が増築されて、当初の2~3倍にまで拡張された。

■永寧殿
1421年、2代国王・定宗の神位を祀るために建てられた建物で、16人の王と18人の王妃が祀られている。王の号である○宗や○祖の「宗」や「祖」は廟号といって、特にすぐれた王に死後与えられる称号。悪政などのために廟号を与えられなかった王や、正殿にスペースがなかった王の神位が収められた。

■功臣堂
正殿の庭にある建物で、特に活躍した83人の功臣の位牌が祀られている。これも増築を繰り返して現在のような横長のデザインになった。

■望廟楼・斎宮
王が心身を統一するための場所。宗廟に到着した王は望廟楼で心を落ち着け、この世への未練を断ち、斎宮で斎戒沐浴して心身を清めた。

■楽工庁
祭祀において、音楽を演奏する楽師や舞妓たちがここに控えた。正殿と永寧殿それぞれにあるが、どちらも柱と屋根が残っているのみ。

■典祀庁・香大庁
祭祀で使う道具を収めた場所。典祀庁は先祖に捧げる食べ物=神饌を準備したり、そのための器や道具を収め、香大庁はお香などの供え物を収納している。

■中池塘
四角い池で地を、丸い島で天を示し、世界の調和表現した池。天円地方という陰陽五行の思想からきている。

なお、宗廟の見学は土曜日のみ自由観覧で、それ以外はガイドによるツアーに参加しなくてはならない。ツアーは言語によって時間と定員が決まっているが、時間等は季節によって変わるので、詳細は公式サイトなどで最新の情報を確認のこと。