震災で入れ替わったマンション選びの優先順位
地上49階建て、総戸数883戸を誇る大規模湾岸タワーマンション「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」のモデルルームでは、住宅としては最大スケールを誇るアイソレーター(積層ゴム)のその大きさを床のデコレーションを使って表現している。実際見る機会のない積層ゴムのサイズを実感できるだけでも安心の捉え方がかわるのではないかという販売側の工夫であろう。同じ湾岸エリアの先行物件「プラウドタワー東雲」は、防災面のディスプレイが話題になった。建物と同じ縮尺の基礎杭を模型で再現し、その径を実物大で床にあらわし、防災備蓄倉庫の中身をばらして壁一面に展示した。家具転倒防止金具の設置も管理規約の改訂とセットで取り入れるという念の入れようであった。
震災を機にかわったのはモデルルームだけではない。ホームページや折り込みチラシにも明らかに変化が見て取れる。支持層の深さ、杭の本数、標高などおもに構造と地盤に関する情報量が間違いなく増加した。マンション検討者の優先項目が入れ替わったのである。この傾向はもはや一過性のものではないだろう。
「積層ゴムは何年もつ?」「縦揺れに効果なし!?」
実際に、モデルルーム来場者と話をすれば、これまで「法で定める耐震基準を満たしているのだから大丈夫だろう」程度に認識していた構造面への不安や疑問がストレートに飛んでくる。とくに、安全性が高いといわれている免震構造の質問が多い。技術的に問題ないのかという。もっとも多いのは「積層ゴムの耐久性」について。そもそもゴムが何十年ももつとは信じがたいという人が多いようだ。「免震ピットに水が入り込まないのか」という質問もある。「縦揺れには効果がないのか」といった確認の意味を込めた質問も少なくない。歴史の浅い技術であるだけに不安が尽きないのだろう。
日本で初めて積層ゴムを使った免震住宅ができてまだ30年も経っていない。実証実験と普及が同時並行で進んでいるといってもいいくらいだ。だが、阪神淡路大震災で効果が認められて以来、急速に導入が増えているのは確か。コストはかかるが、構造として最も高いグレードに位置づけられているのが免震技術である。