冷蔵庫を掃除すると奥から賞味期限を大幅に過ぎた食品が出てくる

冷蔵庫を掃除すると奥から賞味期限を大幅に過ぎた食品が出てくる

在庫管理は一筋縄でいかない

精度が高い在庫管理を行うためには的確に需要を予測し、適正在庫を持てばよいのですが、それは一筋縄ではいきません。

たとえば、冷蔵庫を掃除すると奥から賞味期限を過ぎた食品が出てきたりします。これはうまく在庫管理できていないからです。

企業も同じで期末に棚卸すると倉庫の奥から廃番となった製品が出てきたり、古くなってもう売れない製品が出てきたりします。なぜ、こんなことになるのでしょうか?

そもそも在庫管理とは何か、なぜ在庫管理は難しくなるのか、その5つの理由を身近な例をもとに見ていきましょう。

理由1:多めに発注してしまい在庫となる

原因の一つは適正在庫より多めに発注することにあります。スーパーで安売りしていたため多めに買い、冷凍して忘れてしまうケースです。結果的に不良在庫になります。

資材を扱っている企業では為替や市場の影響を受けますので、市況より安いと「この機会に買っておこう」と多めに発注しがちです。またロット数によるボリュームディカウント契約なら必要数以上に注文してしまいます。

歯科技工所では義歯を作る時に”金”が必要となりますので乱高下する市場から金を仕入れなければなりません。歯科医に請求する義歯の値段を途中で変えるのは難しく、うまく金を仕入れないと赤字になってしまうこともあります。結果として安いと判断した時に金を多めに仕入れるため、在庫が膨れがちになります。

金は経年変化がなく換金性が高いので不良在庫になりにくいのですが、一般的に「不良在庫になりそうなものは小分けして発注する」のが鉄則です。

カレーが牛丼にメニュー変更されると材料が余る

カレーが牛丼にメニュー変更されると材料が余る

理由2:仕様変更で仕入れた部品が余って在庫に

カレーを作る目的で玉ねぎ・人参・牛肉・カレールーなどを買い込みましたが子供が「牛丼を食べたい」と言い出したので、メニュー変更すると人参とカレールーが余ることになります。別の料理に使えばよいのですが、これを忘れてしまうとずっと冷蔵庫に残ってしまいます。

下請企業が、親会社からの発注打診にあわせて事前に部品手配したら、仕様変更となってしまい仕入れた一部の部品が使われなくなってしまうケースがあります。不要になった部品を人参のように別の料理に使えればよいのですが、なかなかうまくいかないと不良在庫になってしまいます。

ロットでしか仕入れられない部品も同様で、必要量が2個でも5個単位でしか売っていなければ買わざるをえず、うち3個は無駄になってしまいます。

理由3:液体在庫は在庫している間に目減りする

在庫の形状が液体になると、さらにやっかいです。子供がジュースと間違えてチューハイの缶を開けてしまいました。すぐ気がついたので口をつけていませんが、一度開けてしまったものは捨てるしかありません(家ならお父さんが飲めるでしょうが)。

企業も同じで液体モノの返品は在庫に戻すわけにいかず、扱いに困ります。

酒造メーカーがウイスキーを樽で熟成させると、熟成させている期間に水分・アルコール分が蒸発することで在庫が目減りします。これを”天使の取り分”と呼んでいます。また液体は温度により容積が変化しますので棚卸しは計量になります。

酒販店で焼酎の量り売りが行われていますが、焼酎という商品コードをつけて目減り分を考えずに単純に在庫管理してしまうと、最終的に在庫が残っているはずなのに樽は空っぽになってしまいます。減った分を補正しなければ実在庫と合いません。

液体ではありませんが、江戸時代には延米(のべまい)という制度があり、年貢米を俵に詰める時の目減りを考えて余計に年貢を納めさせました。出目米(でめまい)とも呼ばれています。化学業界では検収時に目減り・蒸発分を測りますが、送る側が目減りを考慮して多めに納入する場合や検収時の量を在庫として確定するやり方など、企業によってさまざまな方法があります。

子供が知らない間にお菓子を食べると在庫不足に

子供が知らない間にお菓子を食べると在庫不足に

理由4:伝票処理が的確にできていない

お客さんの茶菓子にしようと冷蔵庫に菓子箱を入れておいたら、子供が知らない間に菓子箱のお菓子を何個か食べてしまい、いざお客さんに出そうとすると数が足りません(在庫不足)。

役員が倉庫にやってきて「お客さんへの土産にこれを持っていくぞ」と持ち出すと、同様のケースになります。また子供が菓子箱ごと持ち出し、「茶菓子がない」とあわててお店で買って帰ると箱が戻っていることもあります(子供がこそっと冷蔵庫に戻しています)。

モノが出入りするタイミングで入出庫伝票を切り、伝票処理しなければ実在庫とコンピュータ内の在庫が合わなくなります。

以前は「赤伝」「黒伝」を使っていました。

たとえば、納品した商品に欠品があり、返品になると「赤伝」を切ります。「赤伝」は処理済の伝票を取り消すために発行される伝票のことで赤い色がついていたので「赤伝」と呼ばれましあ。これを発行することで取引は白紙の状態となり、新たに伝票を起こします。証拠(エビデンス)を残すために必ずマイナス処理を行います。

これに対し、通常の取引伝票は「黒伝」と呼んでいます。「赤伝」になると返品在庫となり入庫処理が行いますが、液体の返品は往々にして在庫に戻せず廃棄となります。

現在でも手書き伝票を使い、伝票を元に在庫管理システムに入力している企業がありますが、入力までの時間が問題になります。返品になり「赤伝」を切ったのが朝で、コンピュータ入力が夕方とすると1日のタイムラグが発生します。この間に在庫が減ったと発注をかけると夕方に返品分が戻ってきて過剰在庫になってしまいます(子供が菓子箱を冷蔵庫に戻すのと同じです)。

理由5:「先入れ・先出し」が守られない

豆腐好きの家庭が冷蔵庫に豆腐を常備しているとき、手前から豆腐を取り出していると奥にある豆腐が賞味期限を超えてしまい、捨てるしかありません。在庫数が適切に管理されていても時間とともに劣化する商品は「先入れ・先出し」が基本です。

コンビニのドリンクの棚などは、裏から商品補充ができるようにレイアウトされ、常に手前に古い商品が並ぶようになっています。スーパーなどでも入荷された商品を奥に並べます。ちなみにアイスクリームには賞味期限がありません。

布団のようにかさばる商品や重い商品を扱っている業界ではこの「先入れ・先出し」の運用が難しくなります。倉庫のスペース効率を考えて平積みしてしまうと、どうしても後入れ先出しになってしまいます。平置きや下の商品を取り出せるラックを導入するなど倉庫レイアウトの工夫が必要となります。

「3PL」を利用してアウトソーシング

これらの理由以外にも「倉庫でのピッキング間違いによる誤配」「運送途中で誤って商品を壊す」などいろいろな要因で在庫数が合わなくなってしまいます。

「餅は餅屋」ということで倉庫業務や運送業務を専門業者に委託することが行われています。3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)と呼ばれる事業者でジャストインタイムなど自社では難しい高品質なロジスティクスを提供しています。委託料が発生しますが、サービス品質と自社で行うコストとのトレードオフになります。

ネットショップでは外部の配送業者を活用するので最短でも翌日配送になります。実店舗がないネットショップは土日は休みのところが多いため、金曜深夜に入った注文は月曜日に処理されます。

そこでアマゾンのフルフィルメントサービスを活用して在庫管理や物流業務をアマゾンにアウトソーシングしているネットショップがあります。アマゾンで売っている商品だけでなく、アマゾン以外の販売チャネルで販売した商品の発送もできます。

アマゾンの倉庫に商品を送ると、注文が入ればアマゾンがピッキング、梱包、発送をしてくれます。当日お届け便も使え、365日24時間対応。長期休暇をとりたい期間だけ、売れ筋の定番品をアマゾンに預ける使い方をしているネットショップもあります。

関連ガイド記事

在庫管理システムが使われない理由
生産リードタイム短縮で在庫を減らす
適正在庫数の判断方法
在庫計算方法 回転率を計算



※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。