世界初の免震建物は、1970年代後半のマルセイユ(フランス)ラムべスク小学校、ならびに南アフリカやフランスの原子力発電所である。地盤と建物のあいだに絶縁体(アイソレーター)をはさみ、地震の揺れを伝えにくくするアイデアは日本においても100年以上前からあったそうだが、積層ゴムを用いた建物は1983年に建設された八千代台住宅が第1号であった。現在、日本の免震はおよそ3,000棟(木造のぞく)、世界一を誇る。住宅(マンション)はそのうち約半分に相当する。

免震ピット

免震ピット



「揺れを1/○~1/○おさえる」は正しくない!?

最近、免震マンションのパンフレットや広告に「揺れを1/3~1/2程度おさえることができる」と明記しないケースが増えてきた。関係者によれば、間違ってはいないが、誤認を与えかねない表現であるため、「建物に伝わる地震力を低減する」といった言い回しにかえているとのこと。

社団法人 日本免震構造協会は、ホームページで免震のメリットについて次のように述べている。「免震構造の建物は免震装置の変形により地震のエネルギーを吸収し、建物への地震力を1/3~1/5に低減できるもので、地震時に建物本体とその機能を守り、人の命と財産を守る」。

「揺れをおさえる」から「地震力を低減」に変更したわけだ。この違いは後ほど述べるとして、はじめに表現を例として取り上げたのは、やはり免震の歴史が浅く、その技術が世間に正確に認知されていない現状を伝えたかったから。ゴムが数十階もの鉄筋コンクリートの建物を支えているということ、何十年も性能が変わらないことなどが実感値として理解できないといった声はいまだ根強い。

「ゴムは何年もつのか?」免震装置の役割1:支える

免震マンション「ジェントルエア神宮前」

免震マンション「ジェントルエア神宮前」

最も多く採用される免震装置は、ゴムと鋼板を交互に何層も重ね合わせた積層ゴムである。垂直方向に硬く、水平方向には柔らかい性質をもつ。平常時は建物を支える役割を担うのだが、時間軸でみれば、この「支える」はたらきが圧倒的に長い。そこで気になるのが耐久性である。

わが国における積層ゴム製造シェア第1位のブリヂストン社はその耐久年数を60年としている。しかしこれは「あくまで建物の耐久年数にあわせた数値」であって、ゴムそのものの耐久性はもっと長いものだと断言する。優に100年、半永久的ともいえるものだと。さて、その根拠は何か。

ゴムを支承(上部と下部の間に設置する部材)とする橋梁の例では、1889年建設のメルボルン橋(オーストラリア)が96年後の調査で、劣化が表面から5mm程度にとどまっていたとされ、優れた耐久性能が世界的に証明されている。しかも現在の合成ゴムは当時の天然ゴムに対して1,000倍の耐久性能を誇るという。さらに免震建物の場合、ゴムの劣化を促すとされる紫外線やオゾンの影響を比較的受けにくい環境に置かれていることも加味しなければならない。5~7年程度で交換を余儀なくされる自動車のタイヤのイメージなどは払しょくした方がよさそうだ。