中高年の単身化が10キロ圏、20キロ圏の都心居住を促進する
一方では、晩婚、未婚、離婚などによる中高年・単身者の人口が増加します。2005年の平均初婚年齢は男性30.0歳、女性28.2歳ですが、年齢別の未婚率を見てみると、30歳の女性の40パーセントが未婚、40歳でも約20パーセントの人が未婚です。2035年には男性の3分の1、女性の4分の1が生涯未婚と予想されています。東京都は男女とも未婚率が高いのですが、男性の場合は地方から働きに来ているため、というのが主な理由です。一方、女性の場合は、すでに大学進学率は男性を上回っており、高学歴、高所得者が東京に集中し、自分より更に高学歴、高所得の男性を求めるものの、その数が少ないために結果として未婚となっているのです。更に離婚率も上昇しており、結婚したものの再び単身者にもどる人の数は、10人中3~4人に上っています(厚労省 平成18年度人口動態特殊報告より)。
晩婚、離婚、生涯未婚を含めた多くの単身者が選ぶ住宅地は、賃貸、分譲を問わず、都心部に集中する傾向があります。こうして、今後増加する中高年の単身者を中心に都心10~20キロ圏を住宅地として選ぶ層が増えるのです。
都心志向が増えても住宅価格は値上がりしにくい
東京都を例にあげると、生涯未婚の男性が多く住むのは台東区、荒川区などの城北部、女性は城南部と都心地域で高い傾向が見られます。女性生涯未婚者が都心かつブランド地区に集中するのは、男性生涯未婚者に比べて高所得者が多く、分譲マンションを選択する割合が高いからです。こうして、増加する中高年の単身者は仕事や住まいを求めて都心へ向かうのです。住み手が増加すれば需要過多により、マンション価格は上昇するというのが、市場のメカニズムですが、ご安心ください。平成32年の一次取得者数は22年と較べてマイナス20パーセント以上になり、分譲マンションの買い手が激減するのです。なぜなら平成12年~17年にミニバブルを生じさせた団塊ジュニアは45歳に移動し、需要者の中心層にはならなくなります。また、それ以降に生まれた30代の一時取得層の人口が大幅に減少するためです。
したがって、マンション開発会社は、より利便性が高い立地、個々の住宅の広さ、設備の向上、耐震性など性能の向上、省エネなんどの環境への配慮等々、より一層の付加価値増大を試みなければ住宅は売れなくなり、少ない需要をもとめて価格は下落します。また新築住宅の水準があがれば、相対的に中古住宅の低水準化は加速することになり、中古の低価格化、空家化は避けられなくなります。
より便利な都心立地に、質の高いしかも価格を可能な限り抑えた新築住宅の供給が促進されるとともに、高スペックの中古住宅以外は価格下落もしくは売れずに空家化する、という超買い手市場が形成されることが予想されるのです。人口減少は一面で、住宅を求める人にとっては有利に働く局面もあるのです。
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