東京圏の住宅地が都心20~30キロ圏内に縮小する理由
その3:高齢の単身化が郊外ニュータウンの空家を増加させる
3つ目は、住み手の高齢・単身化による空家増加、郊外の空洞化です。東京への1極局集中、地価高騰による都心部の住宅不足を解消するために、1960年代以降、郊外で大規模に住宅地が開発され、ニュータウンと呼ばれました。ニュータウンは住宅地だけで発展してきた街です。その代表は多摩ニュータウン、千葉ニュータウン、港北ニュータウンなどです。こうしたニュータウンが開業された当時、30代~40代で入居した持ち主のなかには75歳を超える後期高齢期に達する人が多数います。そうした人のなかには、夫婦いずれかの死亡による単身化で長期入院、老人ホームへの入所が増えます。入所すると少ない家財しか置けないので、財が多く片付けられないから置いたままの家主不在状態となるのです。
万一、入院が長引けば施設居住契約を解除される危険もあるため、人に貸すなどしないまま、空家化するケースも多いのです。更に団塊世代が後期高齢期に入る10年後は急激に空家が増えることが予想されます。
一戸建ての空家は庭の手入れも放置されやすいことから、防犯・防火上の不安を近隣に与えやすく、空家が蓄積すると地域の活性化にも悪影響を及ぼします。こうして地域の住み替え循環が乏しくなると、高齢者や低所得者が残りやすく、建物の老朽化、中古価格の下落で居住環境の衰退が重なり、40~70キロ圏の空家率は更に上昇していくのです。
次のページでは、10キロ圏、20キロ圏の都心居住が促進する理由を、さらに違う角度から見ていきましょう。