トップダウンのマネージメントでは部下の能力を活かせない
対応策の1つとしてコーチングの導入を検討するところが増えてきました。指示命令型のマネジメントから相手の自発性を尊重するマネジメントへのシフトしているためコーチ型アプローチが注目されているのです。今回は、社内にコーチングを導入する上で注意するポイントについてお伝えします。
コーチングの目的を具体化する
コーチングは新しい用語であるゆえ、まだ多くの解釈がなされています。「コーチングしましょう」という言葉に使う人それぞれが違う意味を持たせているため、混乱を招いていることがあります。コーチングはもともと、「馬車に乗せて目的地に行くこと」を意味しています。すなわち、コーチする上の前提は目的を達成させることです。ある人にとっては、営業目標の数字を達成することであったり、ある人に取ってはプロジェクトを期限通りに完成させることであったりします。その目的を達成するために、本人に必要な知識やスキルが何かを一緒に棚卸ししたり、それを身につけるために実際に行動を起こさせることで目的に近づけるというのがコーチングの基本です。
しかし、時にコーチングを「問題を解決すること」「相談相手になること」「アドバイスすること」と捉えている人がいます。この前提を持って関わると、コーチングを受ける人はえてして依存的になります。
コーチングの定義とその目的について、最初にきちんと共有することが大事です。よく見られる例は「管理職のリーダーシップ力を上げる」というものですが、これをより具体的にすると、「部下の業績を上げること」「開発スピードを上げること」「部下育成能力を上げること」などになります。
コーチングの実施方法を決める
目的が決まったら、社内での実施方法を決めましょう。大きく分けると、以下の3つに分かれます。1.コーチングを日常的な会話で使えるようにする
短期集合型のセミナーでスキルの練習をし、実際に日常で使ってみるという取り組みです。プロのコーチが使っているコーチングスキルの中から日常的に使えるものを習得し、部下との日常会話に取り入れます。管理職に対して部下とのコミュニケーションを向上させたいとか、新任マネジャーに部下育成のノウハウを短期的に備えさせたいときに有効です。
「質問する」「承認する」などのスキルを習得し部下との会話の中ですぐに活用できるので効果的ですが、長期的に定着しにくいことがあります。
2.期間をかけてコーチとしてのトレーニングを受け、社内コーチ制度を作る
この取り組みは、最近よく見られるパターンです。マネジメント層が本格的なコーチングのノウハウのトレーニングを受け(大抵の場合は数ヶ月にわたる)、認定資格(財団法人生涯学習財団認定コーチなど)を取得します。
マネジャーはコーチする対象者(大抵は部下)を特定し、その人の目標達成に対して本格的なコーチングを行います。コーチする人とコーチを受ける人を特定するので、成果もはかりやすくなります。
例えば、企業合併によって管理職が企業風土の違う部下をマネジメントする必要がある場合や、IT関連など部下のほうが上司より知識的に優れており部下の中にあるノウハウを引き出す能力を多くの管理職に一気に備えさせたい場合は、この取り組みが有益です。この方法は社内でコーチングが定着するので効果的です。
3.トップマネジメントがプロのコーチを受ける
管理職などのトップマネジメントにプロのコーチをつけることは、特に海外のトップ企業でよく見られます。グーグル社のCEOも「今まで受けた最高のアドバイスはコーチをつけろというものだった」と語っています。
新しく会社のトップに任命された場合や、海外赴任で新しい任務につくなど担う責任が大きい場合に有効です。日本ではまだこの動きは一般的ではありませんが、管理職がコーチングを受けると経営に関する方向性や取り組みが明確になるなど、コーチングの効果を実感できます。そのため、コーチングの優位性の認識が高くなり、結果としてコーチングを積極的に社内にも取り入れようとする動きが生まれます。