コーチング,共感

体験を伝えると相手の共感を得ることができる

部下育成やリーダーシップを発揮していく上で、必要な要素として挙げられるのが共感性。一緒に仕事をする際に、いかに相手を共感させられるかによって、先に進むスピードが変わってきます。共感性は必ずしも、相手に寄り添うことでも、同調することでもありません。それは、いかに「同じ絵を見せることができるか」ということに関わっています。

リーダーシップを発揮する場面のみならず、営業でも同じです。相手を共感させる上で鍵となるのが、「体験を伝える力」です。今回は、どのように体験を伝えるか、ということについて取り上げます。

I have a dream

アメリカのキング牧師の有名なスピーチに「私には夢がある」があります。
「私には夢がある。ジョージアの赤色の丘の上で、かつての奴隷の子孫とかつての奴隷を所有した者の子孫が同胞として同じテーブルにつく日が来るという夢が。

私には夢がある。今、差別と抑圧の熱がうずまくミシシッピー州でさえ、自由と正義のオアシスに生まれ変わり得る日が来るという夢が。

私には夢がある。私の四人の小さい子ども達が、肌の色ではなく内なる人格で評価される国に住める日がいつか来るという夢が。」
1963年に「ワシントン大行進」でのこのスピーチに、多くの人が共感し心が動かされました。なぜなら、このスピーチからキング牧師の強烈な想いと、それにまつわる体験が伝わってくるからです。

商談をまとめるのがうまいビジネスマンと、下手なビジネスマンは何が違うかというと、下手なビジネスマンは情報を正確に伝えようとするのに対し、うまいビジネスマンは、仕事の話の中に、今自分が感じていることや思っていることを話の中にうまく取り入れて話しているという傾向があります。

「このお茶は静岡の掛川産の最高級のお茶で、新芽の柔らかい部分だけを使った最高級品です」

というのと、

「1人で住んでいる母がこのお茶を飲んだときに、こんなにおいしいお茶が飲めて幸せだ、と目を細めて言ったんですよ。なんだかうれしくて」

というのでは、どちらに心を動かされるでしょうか。後者のほうがそのときの情景や話し手の気持ち、登場人物の気持ちが伝わってきますね。

次に、体験をうまく会話に取り入れる方法について、少し具体的に見ていきます。

コミュニケーションにはレベルがある

私たちは普段様々なコミュニケーションを交わしていますが、コミュニケーションにはレベルがあります。あなたが日常的に行っているコミュニケーションをここで振り返ってみましょう。

■レベル1 「コミュニケーションがない」という状態
お互いがコミュニケーションを交わす必要がないレベルです。満員電車に乗っている人々は、お互いにまさにレベル1の状態にいます。

■レベル2 「挨拶や社交辞令」という状態
声は掛け合うけれども、それ以上のやり取りは生じないのがレベル2の状態です。

■レベル3 「情報交換」をする状態
お互いに持っている情報を提供しあって相手の役に立ったり、影響しあう関係が生まれるとレベル3の状態になります。

■レベル4 「正直さ」がある状態
正直さとは「まじめ」ということではなく、「あるがまま」を意味します。相手に事実をそのまま、あるがままに伝え合うようになると、レベル4の状態になります。

■レベル5 「体験」を伝える状態
体験とは、「思考、感覚、感情」のことを言います。自分がそのとき何を感じたのか、どんな感情が起こったのか、どんなことを考えたのかを丸ごと相手に伝えることができれば、レベル5の状態になります。

人が感動したり、思わず動かされるのは、レベル4から5の状態のコミュニケーションに接したときです。今までに心を動かされた話を思い出してみてください。それにはどんな特徴がありましたでしょうか。おそらくレベル4や5の条件が満たされていたことと思います。

自分の部下や同僚とのコミュニケーションはどうでしょうか。あなたはどのレベルのコミュニケーションを交わしていますか? また状況によって、どのようにレベル間を調整していますか?

それでは、このレベルを知った上で、相手の心に響く体験談の作り方についてご紹介します。